販売店では新車への乗り換えをあきらめられることを恐れている
「最近では『残価設定ローン』を利用して新車を購入する人が多くなってきています。そして、現状では設定残価率が安全圏、つまり低めに設定されているので完済前、採算分岐点にて下取り査定額で残債を相殺し次の新車へ乗り換えると、予定より早めに新車への乗り換えもできることもありますがお得感が高く、セールスマンも積極的にすすめています。ただ、現状ではすでに発注した人であっても単純に納車まで長い時間を待っていればいいというわけでもないようなのです。キャンセルの発生や生産体制の強化など理由はさまざまなのですが、急に納車時期が当初予想より早まることもあると聞きます。
となると、当初より残債が多いなか手放すことになりますので、『追い金』が発生してしまうこともあるそうです。中古車検索サイトでは割高であっても物件情報は掲載されていますから、いま乗っているクルマの支払い状況と照らし合わせながら、新車よりスケジュールの混乱がなく、納期を読みやすい中古車をあえて選択するという動きもあるようです」(事情通A氏)。トヨタ・アルファード&ヴェルファイアからのダウンサイザーも目立っており、そのような層(所得に余裕がある)が手っ取り早く中古車を選ぶといった動きもあるようだ。
昨今の世のなかの動きを見ても改良後モデルは、諸物価高騰も意識した値付け、つまり改良によるコスト上昇プラスアルファ的な価格上昇は避けて通れない。しかも、改良後モデルになれば飛躍的に需給体制が改善(納期が飛躍的に改善される)されるということもなかなか期待できないだろう。つまり、前述したB氏のコメントのとおり「複合的なもの」がいまのノア&ヴォクシーの高年式中古車への需要が高まり、販売価格に影響を与えているようなのである。
「そこまでしなくても納期の安定している他メーカーライバル車にすればいいのでは?」という話もあるだろう。たとえば日産セレナは日産公式ウェブサイト上の工場出荷時期の目処をみると1~2カ月となっているので、3カ月も見れば納車可能となっている。ホンダ・ステップワゴンも納期はほぼ同様とも聞いている。自販連統計をみると、セレナは多少ノア&ヴォクシーからお客が流れてきているようにも見えるが、ステップワゴンはすくいきれていないというか、そもそも販売苦戦のように見える。
長い間、同カテゴリーではノア&ヴォクシーを合算すれば圧倒的な数で販売トップとなっているので、歴代モデルのユーザーはかなりの数にのぼる。
また、ファミリーミニバンともなるので、パパよりはママが日常生活で運転する機会も多く、そのような女性のなかには他メーカー車へ乗り換えて細かい操作が変わるのに抵抗を示すケースも目立っているので、ノア&ヴォクシーが長期の新規受注停止や発注していても不安定な納車予定時期であっても、あえて「ノア&ヴォクシーから離れない」ということになっていると筆者は分析している。
本稿執筆時点はまさに事業年度締め(4月から翌年3月)での上半期末決算セール真っ最中のタイミング。販売現場からは「この時期に思い切りノア&ヴォクシーを販売できないのは歯がゆい」という声も聞かれる。でもそれは「他メーカーライバル車」へ流れるのを危惧しているのではなく、高年式中古車へ流れるだけならまだしも、新車への乗り換え自体をあきらめられてしまうことをより恐れてのコメントのように感じた。