十字型のアルミホイールはネジからイメージ
──サイド面ではドア下のガーニッシュと、サイドシル部のアンダーガーニッシュが「ギア風」ですが、ライバルではホイールアーチを塗装してブラック部分を増やしていますね?
「新型はもともとコンテナハウスをモチーフとした頑丈なイメージが特徴ですし、ホイールアーチ部も強い造形になっているので、さらにガーニッシュを追加する必要はありません。また、ブラック部分の面積はあまり広すぎると『カッコよさ、タフな男性らしさ』が勝ってしまい、誰もが乗れる『無骨かわいい』から外れてしまうと考えたんです」
──先代のホイールは鉄チン風のアルミでしたが、今回は新しい表現ですね。
「じつは先代もマイナーチェンジ後には十字タイプのアルミに変わっていたんですよ。新型はこれをさらに進化させたく、『ガジェット感』からネジをモチーフとしました。あたかも巨大なドライバーでコンテナハウスのネジを締めるイメージですね」
──次にボディカラーについてお聞きします。新型ではミモザイエローパールメタリック、ソフトベージュメタリック、モスグレーメタリックが初採用ですが、その意図を教えてください。
「先代はより明るく元気なカラーリングでしたが、アウトドアの日常化を意識して、より低彩度の色合いとしました。また、モスグレーメタリックは 『ベース』で非常に人気のあった色で、今後ギアでも人気が出るのでは? と思っています(笑)」
──エンブレムやサイドガーニッシュ、インテリアなど、新型はオレンジがアクセントになっていますが、なぜオレンジなのでしょう?
「アウトドアで使われるカラーをいろいろ検討したのですが、冒険心や心の高まりを期待する色としてオレンジとしました。オレンジ自体は先代も使っていたのですが、よりハードな機能性を意識して、赤味を加えた彩度の高いオレンジとしています」
CMFデザインの可能性を拡げる取り組み
──次にインテリアについてうかがいます。インパネなどグリーンの配色が特徴的ですが、実車を見ると写真よりかなり彩度の低い緑ですね。
「そうですね。アウトドアらしいアースカラーをいろいろ検討したのですが、造形との相性、オレンジのアクセントカラーや車体色との組み合わせも考え、より彩度の低いカーキグリーンとしました。インパネ部は、標準車ではビッグトレー全面を、カスタムでは上部のみ配色していますが、ギアでは道具感を出すためインパネボックスまわりまで色を入れているんです」
──逆に、ドア内張りを見るとグリーン塗装は上部のみになっていますね。
「じつは、新型のインテリアは色を入れられる部分がいっぱいあるんです(笑)。そこでスケッチもかなり描いたのですが、ドア部については標準車やカスタムのように広く塗るとイチバンの見せ場にしたいインパネボックスまわりが目立たなくなってしまうんです。ギアのインテリアの最大の特徴は、ツールボックスのように分厚く頑丈に見せたトレー下のビード造形です。そこに視線が集まるようドアはL字加飾のみ塗ったワケです」
──シート表皮はギア独自のものですが、模様など、どのような意図があったのでしょう?
「ギアらしいタフなイメージに加え、はっ水効果がひと目で伝わるものとしました。表皮はエンボス加工をしているのですが、高低差が大きいとタフさが出る一方でツヤ感が減ってしまうので、そのバランスが難しかったですね。模様はタイヤの溝や歯車、外装の多角形などを意図しているんですよ」
──では最後に。ギアがひとつのジャンルを築いたように、特別仕様車を含めたスズキのCMFデザインの提案は非常に積極的です。この点、現場でもそうした意識はあるのでしょうか?
「じつは私たち自身もそう思っています(笑)。スズキは『小・少・軽・短・美』を行動理念としていますが、コストを抑えつつもベース車とは異なる世界観をより多くの人に届けたいと考えていて、ドンドン提案を進める社風がありますね。とくに日常使いの多い軽自動車では、いい意味でクルマ過ぎない提案も多いと思います。その点も含め、他社さんとは違うと感じていますね」
──現場でもそうした意識があったんですね。本日はありがとうございました。