世界有数の巨大自動車メーカー「VW」に本国工場閉鎖検討の報道! いま何が起こっているのか? (2/2ページ)

「みんな乗っている」が購買意欲を下げている

 そのクルマ作りの姿勢を支持するユーザーはいいのだろうが、それが故になかなか他ブランドからVW車へと手を出しにくくしているのも否定できないだろう。VW車のコアなファンも2015年に発覚したディーゼルスキャンダルを発端に、熱心なファンほどVW車から離れる傾向が目立っていたとも聞いている。

 中国市場では強みを見せるVWだが、新興国でも新車需要で勢いのある東南アジア市場ではVW車の存在感は想像以上に薄いものとなっている。トヨタが世界的に全方位展開しているのと比べると、苦手市場が存在するという点も否定はできないだろう。

 各ブランドそれぞれの問題だけではなく、長い間世界市場に高質なクルマを大量に供給していた「老舗ブランド」はそれがゆえに、一部消費者から「ありふれている」とか、「誰でも乗っている」ということで若い世代を中心に敬遠される傾向も最近は顕著なようで、ここのところは意識してそれを払拭しようとする動きも目立っている。

 日本車が圧倒的な販売シェアを誇る東南アジアでは、ここのところ都市部を中心にBEVをメインとした中国メーカー車が注目されているが、その背景にも「周囲が日本車だらけ」というなかで、「他人と違う」というところも意識する消費者が、経済成長を続け生活が豊かになるなかで多様化も進み、それが増えてきていることも大きいようである。

 日本車のトップメーカーであるトヨタは、豊田章男氏が社長に就任して以来(現会長)、クルマ作りの方向性が変わり、趣味性を強め、スポーティといったそれまでとは異なる新たな魅力をもたせるという路線へ舵を切ったといっていいだろう。

 世界一の自動車市場である中国では、VWブランドは販売統計上販売トップが常連だったのだが、2023暦年締め上半期(1~6月)では、トップをBYDオート(比亜迪汽車)に譲り2位となっている。巨大な新車販売市場をもつ中国なので、沿岸部や内陸部、都市部や地方部で販売環境が大きく異なってくる。各地域の地元メーカーがその地域で際立って販売で強みを見せるのも特徴のひとつ。

 ある意味多様性のある市場ともいえるのだが、中国でのVW車のラインアップをみると、あくまで筆者の主観となるが、イケイケムードの目立つ多くの中国メーカー車に比べると「野暮ったさ」が、目立っているように見える。新車販売でもフリート販売に支えられる部分も見受けられるが、それでも息切れしてきているのかもしれない。

「トヨタといえばHEV(ハイブリッド車)」というイメージもすっかり定着し、いまもなお世界市場でリーディングカンパニーとしてクルマを売り続ける原動力のひとつともいえる。また、ブランド内においてもコンパクトモデルから、大型の上級モデルまで国内外を問わずまんべんなく売れているというところもVWとは異なる傾向のように見える。VW車は大型上級車が苦手な印象を強く受ける。

 日本車もかつては安価で高質な小型車をメインに世界で販売し、名をはせた歴史があるが、VWはビートルやゴルフといったモデルの存在が大きすぎたこともあり、それが軌道修正を難しくさせてしまい、今日にいたって創業以来初となるドイツ国内工場閉鎖を招こうとしているのかもしれない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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