この記事をまとめると
■2ストロークエンジンは4ストロークエンジンより高トルクかつ高出力だった
■初代と2代目のジムニーには2ストロークエンジンが搭載されていた
■高速巡航は苦手だがオフロードの走破性に優れていた
2ストロークエンジンとは
いまの軽自動車に搭載されているエンジンは、3気筒、4気筒など気筒数の違いや、NA(自然吸気)、ターボやスーパーチャージャーなどの加給かなどの仕様の違いはありますが、すべてのエンジンが4ストロークのレシプロエンジンです。
そう聞いてもエンジンに詳しくない人は「?」という感じかもしれません。詳しい解説は以下で行いますが、かつて乗用車に搭載されたエンジンは、過去に遡ると別の種類があったんです。
そのひとつが2ストロークエンジンです。前述のようにいまの主流は4ストロークというタイプのエンジンですが、その方式が異なる2ストロークというタイプのエンジンを搭載していた車両がありました。
いまでは環境への対応が困難として廃れてしまいましたが、当時は4ストロークよりもパワーとトルクが優れるとして、4ストロークの上位に位置付けられていました。
そのため、搭載されていた車種もマツダとスズキを中心に複数ありました。そのうちの1種がスズキのジムニーです。
起伏の大きいオフロードでの登坂性能に有利だということで、2代目まで主力エンジンとして採用されていました。
ここではその2ストロークエンジンを搭載していた初代のLJ10/20系&SJ10系と2代目初期のSJ30系をクローズアップして少し掘り下げてみたいと思います。
■2ストロークエンジンってなに?
現在主流の4ストロークタイプのエンジンは、吸気・圧縮・燃焼・排気という4つの工程を繰り返すことで燃料吐空気がミックスされた混合気の燃焼を完了する方式のエンジンです。ピストンは吸気と排気で1往復し、次の1往復で燃焼と排気を行います。なので、1セットの工程を行うのに2回転を要します。
その4ストロークに対して2ストロークタイプは半分の1往復で1セットの工程を完了できる方式のエンジンです。
流れを言語化すると、まずは燃焼の勢いでピストンが下がる途中で側面に空けられた穴(ポート)から排気をおこない、それから少し遅れたタイミングでその排気の勢いによる負圧を利用して排気とは反対側のポートから吸気をおこないます。下死点で上昇に転じたピストンが吸排気のポートを塞ぐと圧縮が始まり、上死点付近で点火されて燃焼が行われ、1セットの工程が完了します。
1セットの工程を半分の1回転で済ませられるために回転に対する出力の効率がよいことに加えて、カムシャフトやバルブなどの作動部品が不要なことでロスが少なく、4ストロークに対して最大で2倍くらい高いパワーが得られるのが最大の特徴です。
部品点数が少ないことはエンジンの軽さに貢献するので、車両全体の軽量化にも効果があります。
そのメリットがある反面、最大の欠点は燃費が悪いことです。燃焼室を密閉するバルブを備えた4ストロークは燃料のロスが少なくできるので燃費に有利ですが、圧縮と吸気をほぼ同時に行い、バルブを備えていない2ストロークでは、混合気が排気に引かれて排気ポートから出て行ってしまい、どうしてもロスが多くなってしまいます。
その燃焼されずに排気管に生ガスが漏れ出てしまうことから、排ガスの浄化には必須の触媒を稼働させることができず、環境の対応が困難ということで、排ガス規制が施行されたタイミングで4輪用の2ストロークエンジンは製造されなくなってしまいました。