メーカー名で中国車の雰囲気を軽減
ただ中国政府としては国内の生産工場もしっかり稼働してもらわないと、雇用面も含め都合が悪いのは否定できない。そこで俄然注目されるのではないかと筆者が考えるのが日本市場進出である。世界3位から4位になったとはいえ、日本国内の年間新車販売台数(2023事業年度締め)は約452万台となっている。現状そのなかに占めるEV(BEV、PHEV[プラグインハイブリッド車]、FCEV[燃料電池車])の販売比率は2%台だ。
仮に中国系メーカーのBEVが全体の3%ほど売れると、約13.5万台となる。政府補助金の話は別としても、2023暦年締めでの中国の新車販売台数約3000万台のうち、NEV(新エネルギー車/BEV、PHEV、FCEV)の販売比率は31.6%となっており、台数ベースでは約950万台(日本の年間総新車販売台数の2年分以上)、性能や品質に対する中国製BEVの高い割安感は統計数値だけを見れば、その圧倒的な量産効果による企業努力の結果というものも軽んじて見ることはできないものと考えている。
政府間レベルも含め、日本と中国の間には何かと軋轢があるのは否めないので、ほかの市場のように軽々と日本市場へ進出するのは中国系メーカーもリスクが高い。
しかし、EUやアメリカ、カナダのように関税引き上げを行おうとしても、中国政府から「自由貿易を阻害する」などといわれれば日本政府がそこまで強硬に出ることができるかは疑問が残る。ここまである意味包囲網を敷かれれば、「それでは日本へ」と考えるのは自然の流れのようにも見える。
中国アレルギーが低いともされる東南アジアでも、あえてメーカー名を表に出さずに中国メーカーが進出するケースが目立っている。たとえばタイにおける上海汽車は多くの車種を「MGブランド車」としてラインアップする。また、中国メーカーは中国語名と欧文社名をもっている。たとえば奇瑞汽車は「チェリー」、長城汽車は「グレートウォール」といった具合である。日本でも有名なBYDオートもこれは欧文社名であり、「比亜迪汽車」が中国語社名であり、これに近い発音がBYDとなっている。
ブランド名で展開しなくとも、欧文社名を全面に押し出してくることで「ごまかし」は可能なのである。タイで中国メーカーだとすぐわかるのは「CHANGAN」としている長安汽車ぐらいといえるだろう。
筆者は最近、機種お任せでスマホの機種変更を行った。見慣れないブランド名なので調べてみると、中国「シャオミ」製であった。
本稿執筆段階では日本の新しいリーダーを決めるともいえる、自民党総裁選挙の話題でニュースが盛り上がっている。世代交代が進むともいわれており、政府がこのタイミングで何か新しいアクションを起こせば、中国メーカーにも好機到来となるかもしれないし、中国としてもなんらかの動きを見せるかもしれない。