この記事をまとめると
■フォルクスワーゲンのコンパクトモデル「ゴルフ」の売れ行きが伸び悩んでいる
■SUVブームで人気モデルが分散化したことも要因
■新車価格の値上げも影響
納期遅延と値上げの影響で販売面に大きな影響を受けたゴルフ
かつてVW(フォルクスワーゲン)は、海外メーカー製輸入車の販売ナンバーワンブランドだった。ところが2024年1〜8月の輸入状況を見ると、1位はメルセデス・ベンツで、2位にBMWが入り、VWは3位であった。
状況が変わったきっかけは、2015年に北米で発覚したディーゼルエンジンの排出ガス計測をめぐるVWの不正問題だ。当時、VWのディーゼルは日本で売られていなかったが、VWにはクリーンなブランドイメージが強く、これが損なわれたことで売れ行きが激減した。2015年10月の日本国内におけるVWの登録台数は、対前年比52%に留まった。
その後もVWの売れ行きは伸び悩み、メルセデス・ベンツやBMWはSUVのバリエーションを増やした。ディーゼルエンジンについても、メルセデス・ベンツやBMWは搭載車を整えたが、VWはディーゼル不正問題を引きずって導入できない。これらの悪条件が重なり、VWの売れ行きは伸び悩んだ。
そして直近のVWでは、かつて人気の高かったゴルフの販売に陰りが見えている。2015年までは長期間にわたってVWゴルフが輸入車の販売1位だったが、近年では、メルセデス・ベンツAクラス/Cクラス、BMW3シリーズなどに販売面で抜かれることも増えた。時期によっては、同じVWのTクロスやポロの登録台数が多いこともある。
なぜゴルフの人気が低迷しているのか。販売店に尋ねると以下のように返答された。
「2022年から2023年にかけて、ゴルフは納期が最長で1年程度まで延びた。そのためにゴルフの売れ行きが下がっている。いまの納期は元に戻ったが、SUVの人気が高まり、ゴルフからTクロス、あるいはTロックへの乗り替えが増えている。以前はVWといえばゴルフだったが、最近は需要が複数の車種に分散されている」。
ゴルフの売れ行きが下がった背景には、販売店の指摘したSUVの高人気と併せて、ミドルサイズハッチバックの低迷もある。ボルボV40は日本の市場に合ったミドルサイズハッチバックだったが、いまでは廃止され、コンパクトSUVのXC40に切り替わった。
それからゴルフの値上げも影響を与えた。先代型のベーシックグレードは300万円前後だったが、現行型はもっとも安価なグレードでも350万円前後に達して、売れ筋グレードは400万円前後だ。このように値上げも含めて複数の理由により、ゴルフは売れ行きを下げた。