毎日が冒険になる! 「10マイルアドベンチャー」をテーマに掲げる新型スペーシアギアの戦略 (2/2ページ)

スペーシアギアは”ギア”としての需要がある

 新型スペーシアギアのSUVテイストは冒頭で記した丸いヘッドライトやメッキグリルだけではない。前後バンパーには悪路でのボディガードを想起させるスキッドプレートが与えられているし、サイドドアガーニッシュのGEARロゴやテールゲートの車名ロゴにはオレンジ色をあしらうことでキャンプ道具のような表現をしている。

 フロントバンパーではウインカーランプとフォグランプ、そして近距離用の超音波センサーをひとつのエリアに集約することで機能的なガジェット感を演出しているのもスペーシアギアの特徴だ。カーキグリーンのインテリアでオリジナルデザインのタグなどオレンジのアクセントが目立っているのも、道具感の表現として好ましい。

 そんなスペーシアギアはNAエンジンとターボエンジンのマイルドハイブリッドで、それぞれFFと4WDを用意しており、価格帯は195万2500円〜215万7100円となっている。これはスペーシアカスタムの上級グレード(199万5400円〜219万3400円)より少し安いくらいのものであり、ともすればスペーシアギアとスペーシアカスタムはユーザーを奪い合ってしまう、ということも考えられる。

 スペーシアといえば、2024年5月に軽自動車新車販売トップの座をホンダN-BOXから約2年ぶりに奪ったことで話題となった。つまり、スペーシアギアを追加せずとも、十分なセールスを誇っている。せっかくの勢いを、スペーシアギアとスペーシアカスタムでカニバ(共食い)ってしまうことで減速させてしまってはもったいない……とも思うが、それは杞憂となりそうだ。

 スペーシアの商品企画担当者に聞けば、従来モデルでの販売比率は「標準系4:カスタム4:ギア2」になっていたという。そして先代スペーシアギアも標準系とカスタムが販売されている途中で追加されたのだが、カニバることなく上乗せ的に売れていたそうだ。

 たしかに純粋にユーザーの気もちで新型スペーシアのラインアップを眺めたときに、価格が近しいからといってスペーシアギアとスペーシアカスタムで迷ってしまうユーザーが多数派になるとは考えづらい。スペーシアギアを選ぶというユーザーが現れ、そのまま販売台数を上乗せするという風に捉えるのが妥当だろう。

 ちなみに、直近(2024年8月)のスペーシア販売実績は1万1166台で、軽自動車2位となっていた。机上の空論となるが、従来モデルと同様に「標準系4:カスタム4:ギア2」という比率で売れ、スペーシアギアのぶんがまるまる上乗せされるとすれば、スペーシア全体の販売台数は約1万4000台となる。同じく直近のN-BOX販売台数が1万4441台なので、ギアの追加によってスペーシアが再び軽自動車販売トップに返り咲く可能性は非常に高そうだ。

 もっとも、絶対王者に君臨するN-BOXにおいてもSUVテイストの「N-BOXジョイ」が発表となっているのもご存じのとおり。2024年度後半は、軽スーパーハイトのSUVバリエーションによる熱い販売合戦が盛り上がりそうだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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