トヨタは販路が強い
それでも少数ながら、ワゴンスタイルのバンが残っている。トヨタ・プロボックスと日産ADだ。両車ともにコンパクトな4ナンバー車で、全高は1550mm以下に収まる。
トヨタの販売店にプロボックスについて尋ねると以下のように返答された。
「プロボックスは営業や配達など、大きな荷物を積まない使われ方をすることが多い。ハイエースと違って、立体駐車場を利用しやすいこともメリットだ。低重心だから、高速道路を使って長距離を移動する使われ方も目立つ」
このように背の低いバンのプロボックスとADには、乗用車に近い用途がある。そのために長距離を移動することも多く、開発者は以下のように説明した。
「長距離を移動すれば、車内の滞在時間も長くなる。そのためにオフィスのような機能が求められる。そこでインパネにテーブルを装着するなど、パソコンを使ったデスクワークや食事をしやすくした」。
そこで、バンの売れ行きを見ると、2023年の1カ月平均登録台数は、プロボックスが4931台、ADは757台であった。プロボックスの売れ行きはライズやヴェゼルと同程度で、小型/普通乗用車の人気車に相当する。ADはプロボックスの15%程度と少なく、リーフやGR86と同等の売れ行きだ。
プロボックスの登録台数がADに比べて圧倒的に多い背景には、複数の理由がある。まずプロボックスは引き出し式テーブルを装着するなど、使い勝手が優れていることだ。パワーユニットも異なり、プロボックスにはADが用意しないハイブリッドが設定される。
しかもハイブリッドはオートエアコンなども標準装着され、ノーマルエンジンと比べたときの価格アップを27万5000円に抑えた。最近のトヨタ車には35万円の価格差が目立つが、これと比べてもハイブリッドが相対的に安い。
そしてトヨタは、ハイエースの好調な販売からもわかるとおり、法人向けの営業が強い。全国の販売店舗数も日産の約2倍だから、好調に売られる条件がそろっている。