この記事をまとめると
■3代目スズキ・アルトにはさまざまな派生モデルが存在していた
■とくに「スライドスリム」は3ドアでもスライドドアを採用するという奇抜なモデルだった
■4代目アルトには引き継がれなかったが時代を先取った斬新なコンセプトの1台だった
3代目アルトにはさまざまな派生モデルが存在していた
スズキのエントリーモデルとして1979年に初代モデルが登場して以来、現在に至るまでその地位を守り続けているアルト。
そんなアルトにはさまざまな派生車種が存在しており、とくに知られるのは2代目モデルから追加されたホットモデルの「ワークス」であるが、1988年に登場した3代目にはワークス以上に個性的な派生モデルが存在していた。
そのなかのひとつは1991年に登場した「ハッスル」で、Bピラー以降を超ハイルーフ化した日本では珍しいフルゴネットタイプのスタイルは、実用的に拡大された荷室容量だけでなく見るものに大きなインパクトを与えるモデルとなっていた。
そしてもうひとつが3代目デビューと同時に設定されていた「スライドスリム」というモデルだ。このスライドスリムは、一見すると通常のアルト3ドアとほとんど変わらないスタイルとなっていたが、大きく異なるのがドアの開閉方法で、なんと名前のとおりスライドドアとなっていたのである。
両側のドアをスライドドアとすることで、狭いスペースのない場所でも乗り降りがしやすいということでスライドスリムという名前が付けられており、さらに回転ドライバーズシートも備えることでエレガントかつ容易な乗り降りを可能としていたのが最大の特徴だった。
そのため、よく見るとドアノブがドア前方に縦型のものが備わっており、リヤフェンダーにはスライドレールが埋め込まれているのだが、そのレールに合わせてフロントドアにデカールが貼られ、うまくデザインに落とし込まれていた。
その後、1990年3月に実施されたマイナーチェンジでは、軽自動車規格の変更に合わせてアルト全車が550ccから660ccに排気量が拡大され、スライドスリムはスライドドアを運転席側のみとし、助手席側は2枚のヒンジドアとすることで後席ドアへのアクセスを容易にし、スライドドアにはパワークロージャ―機構を採用した。
残念ながらこのスライドスリムやハッスルといった変わり種のアルトは3代目モデル限りで、その後のモデルには採用されることはなかったが、現代は背の高いスタイルやスライドドア採用車が全盛となっていることを考えると、時代を先取りしすぎたモデルということがいえるのではないだろうか。