水冷・空冷は聞いたことあるけど油冷ってなに? 4輪派には謎のエンジン冷却方式 (2/2ページ)

オイル量の増加や油温管理が必要になる

 一方、空冷式エンジンにおけるオイルクーラーは、エンジンオイルの過熱を防ぐためだけではなく、油冷的な狙い(エンジン自体の冷却)が込められていることも珍しくない。

 エンジンの“深いところ”に溜まった熱を冷やすにはオイルクーラーのほうが有効という見方もあったりするほどだ。それでも、エンジンオイルを適正な温度範囲とすることが優先されているのはいうまでもないだろう。

 たとえば、1997年に996型にフルモデルチェンジする以前のポルシェ911が積む水平対向6気筒エンジンは、空冷式エンジンであった。そして、10リットルを超えるエンジンオイル量や巨大なオイルクーラーを備えていたことから、実質的に油冷式であると表現されることも珍しくない。

 ただし、燃焼室の温度管理が難しいために水冷化したという進化の流れを考えると、本質的には油冷ではなく空冷の限界を感じた結果であったというのが真実に近いだろう。

 さて、スズキの油冷システムにおいて、水冷式に必要な冷却液やラジエターが不要になることで軽量化と冷却性能を両立できるという油冷式のメリットについて触れたが、デメリットはないのだろうか。

 まずいえるのは、基本的な熱交換性能についてエンジンオイルは冷却液に劣る傾向にある。冷却液は温まりやすく冷えやすいと冷却システムにマッチした特性だが、オイルは温まりづらく冷えづらい傾向にある。

 そのため、発熱量が多くなるほど油冷式で温度管理をするのが難しくなってくる。油温計・水温計を備えて、エンジンコンディションをチェックしているオーナーであれば、こうした特性の違いは肌で感じていることだろう。

 また、油冷式で冷却性能を高めるにはオイルクーラーのぶんなど使用するオイルの量が増えがちだ。そうなるとオイル交換時のコストがかかってくることになる。

 冷却液であれば、交換サイクルは長くなり、冷却液自体もオイルより安価なため、メンテナンスコストが抑えられる。トータルでのコストパフォーマンスを考えると、こと4輪用エンジンについては水冷式が最適解といえそうだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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