この記事をまとめると
■最近の新車販売店では商品知識がない状態で接客しているセールスマンを見かける
■タブレットで情報を逐一確認しながら接客している姿が一般化してきた
■「意識の高い」セールスマンに出会う機会が減ってきている
自社製品の知識も十分にないまま接客するセールスマンが増加
筆者は仕事柄新車ディーラーへ出入りするのだが、最近気になることがある。セールスマンが自社取り扱い車両ついて十分な商品知識がないなか来店客に接している印象を受けるケースが目立ってきているのだ。
確かに最近の新型車は、安全運転支援デバイスやコネクティッドシステムなど、装備は複雑化の一途を辿っている。また、メーカーオプションについては、いまや複雑な「セットオプション」も当たり前となっており、現場のベテランセールスマンからも、「新型登場直後ではとてもではないがすべてをマスターすることはできない」という話も聞いている。筆者は何も揚げ足取りをするつもりはない。細かいオプションの組み合わせなどを把握していないから「商品知識は大丈夫なのか?」と感じているわけではない。
先日、あるメーカーの某車種を見に行く機会があった。3つのグレード構成があり、グレード間には安全運転支援デバイスなどの基本装備に差はなく、アクセサリーの有無でグレード間に差をつけていた。そこで「中間グレードはアルミホイールですが、廉価グレードは確かスチールホイールになりますよね」と聞くと、「いいえ、廉価グレードでもアルミホイールですよ」と、堂々と間違った説明をセールスマンがしてきた。ボディカラーの説明でも、有償色がどれなのかいまひとつ自信のないなか説明していた様子であった。
聞くところ、新人セールスマンとのことなのだが、値引き交渉などでおぼつかないのは経験不足だから仕方ないともいえるが、商品知識は本人の取り組み方次第となる。新車販売に限らず、サービス業では「生返事」は御法度とされている。「わからないのなら、わかりませんと正直にいって調べる」というのが正しい接客となる。
様子を見ていると、もち歩いているタブレット端末にライバル車とのスペック比較表などのデータがあるようで、そこに頼り切っている部分もあるようだ(もち歩けるのでその都度タブレットを見せて説明すれば事なきをえる?)。また、若い世代ほど紙ベースでの「カタログを読み込む」といったことも縁がないようで、やはりタブレット端末のデータベースのカタログをその都度見ながら説明するという商売が一般化してきているとも筆者は感じている。
「セールスマンの人事考課は販売台数よりも、『どれだけ利益を上げたか』がより評価されます。つまり薄利多売よりも、台当たり利益をしっかり確保して売るセールスマンがより評価されるのです」とは事情通。値引きをできるだけ抑えて販売するのが優秀なセールスマンとなる。
ベテランともなれば人間関係を構築した「馴染み客」も多く、それほど難しいことではない。経験の浅い新人でも商品知識さえしっかり把握していれば稼ぎのいい新車販売が可能なはずで、商品知識をマスターし、お客の質問に即座に的確に返答でき、しかも独自にライバル車と比較したような情報まで提供できれば、お客との距離はぐっと短いものとなり、それほど値引き交渉が介在することなく受注することも可能となる。