本当ならロータリー搭載で登場したハズが幻に! マツダ・シャンテの残念すぎる運命 (2/2ページ)

開発時にはロータリーエンジンを搭載する予定だった

 当時、マツダは、1967年にロータリーエンジンを搭載するコスモスポーツを世に出していた。翌年には、2代目ファミリアとなるプレストロータリークーペを売り出し、ロータリーエンジン車の拡大をはかっていた。当初のロータリーエンジンは、10A型の1種類で、排気量は491ccだった。これをふたつ繋げて2ローターとし、コスモスポーツやプレストロータリークーペに搭載していたのだ。

 なので、10A型の排気量を調整して1ローターで使えば、軽自動車の360ccに適用できなくもない。そのような構想が、シャンテの開発当初にはあった。ところが、監督官庁や業界他社から懸念の声が上がった。

 ロータリーエンジンは、三角おむすび型をしたローターが、1回転する間に、三角形の各辺にある燃焼室により3回の燃焼ができる。これに対し、当時軽自動車で多かった2ストロークエンジンは、1回転で1回の燃焼だ。4ストロークであれば、2回転して1回の燃焼しかできない。当然、ロータリーエンジンは燃焼室の排気量が同じ360ccであっても、より大きな馬力を出せることになる。

※写真は2代目ファミリアロータリークーペの10Aエンジン

 このため、庶民のクルマとして枠組みが決められた性能に対する制約を、大きく上まわる可能性が出て、懸念が示されたといえる。

 そこでエンジンの構想は大きく転換され、シャンテは2ストローク2気筒を採用することになった。

 駆動方式はこれまでどおり後輪だが、前後タイヤ間のホイールベースが2m20cmと、R360やキャロルが2m以下であったのに比べて伸ばされ、室内空間を広げたり、直進安定性を高めたりといった利点が生まれた。

 今日も、正しい運転姿勢と、それを実現するペダル配置にこだわるマツダだが、ロングホイールベースによる自然なペダル配置は、前輪駆動を採用する当時のほかの軽自動車と比べても、シャンテならではの特徴のひとつといえた。

 マツダ独自の軽乗用車は、シャンテまでで一旦途切れ、次に登場するのは、1982年のオートザム・キャロルとなる。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

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乗馬、読書
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