この記事をまとめると
■高速道路の案内標識に用いられるフォントは2010年7月から新フォントに置き換えられている
■かつては「公団ゴシック」という道路公団が独自で手作りしたフォントが使用されていた
■ヒラギノへの置き換えが進んでいるためいつまで公団ゴシックを見ることができるかはわからない
10年ほど前までは高速道路には不思議な文字の案内表示板があった
2010年以降にクルマの運転を開始された方は、とくに何も感じていないのかもしれない。だが現在、30代後半以上のドライバーであれば、ここ10年ほど、高速道路のICを通過する際などに「……ん?」というかすかな違和感を覚えた経験があるのではだろうか。
違和感の正体は、高速道路の案内標識に用いられている「フォント」である。じつは2010年7月から順次、各地の高速道路上にある案内標識のフォントは「新しいフォント」に置き換えられているのだ。
2010年7月まで使用されていたフォントは、俗に「公団ゴシック」と呼ばれている、道路公団(当時)独自の手作りフォントだった。
1963年に標識レイアウトの原型がかたまり、名神高速道路で初採用された時代は、現在と違って多様な市販フォントは普及していなかった。そのため、限られた市販フォントのなかからなるべく視認性に優れるものを採用しようとしても、画数が多い漢字などはどうしても「遠くから時速約100kmで移動しながら見る」というシチュエーションにおいては「文字が潰れて見えてしまい、判読できない」という試験結果になってしまいがちだった。
そのため、当時の日本道路公団は、ひとつひとつの文字を手作業でデザインした。そしてそれを40年以上にわたって使用し続けたのだ。それが、俗に「公団ゴシック」と呼ばれている独特な書体である。
公団ゴシックは、公団ゴシックであるがゆえに「正しさ」よりも「見やすさ」を最優先してデザインされた。例えば、漢字の「ハネ」や「マゲハネ」と呼ばれる部分を独自の判断で省略したり、「縦画」を1本省略したり、あるいは「鷹」などの画数が著しく多い漢字においては、大胆な省略も行った。