この記事をまとめると
■最近の急速充電器は50kWを基準で高性能な機器では90kWの出力を誇るモデルも増えた
■急速充電はバッテリーの温度が上がる傾向にあるので車両側の冷却機能が重要だ
■EVは自宅で200Vの普通充電をメインとして運用するのがベストだ
高性能な充電器は誰でも使えない!?
電気自動車(EV)の普及に欠かせないのが、充電網の確立だ。そのなかで、経路充電と位置付けられる急速充電器の性能が、近年向上してきている。
かつては、20~30kW(キロ・ワット)といった性能の機器もあったが、今日では50kWを基準とし、より高性能な機器では90kWの設置もはじまっている。欧州では、これらよりさらに高性能な充電器の設置も行われている。
一方、どのEVでも高性能な急速充電ができるかというと、車種によって差がある。たとえば、90kWの充電器に接続しても、EV側の充電能力がそれに対応していなければ、低い電力での充電しかできない。
それはなぜか?
リチウムイオンバッテリーへの充電は、基礎充電といわれる200ボルト(V)での普通充電が基本だ。この基本に則って運用し、自宅や勤務先などで時間をかけて充電する。
それに対し、経路充電となる急速充電は、遠出をするため途中で電力が足りなくなる際に追加充電する方法だ。なので、経路充電といわれる。ただし、急速充電を多様すると、バッテリー劣化につながりやすい懸念もある。
EV用のバッテリーに限らず、バッテリーや電池には内部抵抗がある。電気の出し入れに対し、抵抗が働くのだ。これによって、発熱する。
急速充電は、短時間に大量の電気を入力するので、内部抵抗による発熱が大きくなって、充電しにくくなる。それを回避するには、バッテリー温度を低く保つ冷却が必要だ。逆に極寒の季節は、温度が低すぎて電気の出し入れが悪化する。このときは、逆にバッテリーを温める必要がある。バッテリーは、人間が快適と思える気温(温度)で使うのが好ましい。
200Vの普通充電なら、大量に電気を送り込む必要がないので、温度変化は大きくならず、おおむね順調に充電できる。しかし急速充電は、無理をするのでバッテリーのための冷暖房機能が不可欠になる。このため、車両価格も高くなる傾向になる。なので、そうした機能をもつEVしか、超高性能急速充電器を十分に使いこなせないのである。
充電の仕方は、人間の食事にたとえることができる。基礎充電は、日々の食事のとり方に通じる。毎日食べる食事は、よく噛んで、時間をかけたほうが健康によい。早食いの人は、急速充電に似て、胃腸への負担をかけやすくなる。さらに、早食い競争のような催しでの時間を区切っての大食いは、高性能な超急速充電に似て、たまにするならできなくもないが、毎食そんなことはできないし、体調を崩したり、食べたものを戻してしまったりすることがあるかもしれない。
バッテリーの技術的な側面があるとはいえ、充電は人間の食事に似ていると思えば、基礎充電といわれる200Vでの普通充電が大切であることが理解できるのではないか。