路線バスは「乗客」が自ら身を守らなければ「車内事故」は避けられない! 運転士の努力だけではどうにもならない現実とは (2/2ページ)

本当に危ないのは止まる寸前!

 先日、朝早くあるバス停でバスを待っていたら、まだ道路が空いている時間帯にもかかわらず、目立って時刻表より遅れてバスが到着した。バスに乗ると、運転士は時間に遅れたことだけを詫びる車内放送をするだけであった。そして当日の昼ごろに同じ路線のバスに乗ると、運転士が「本日は車内転倒事故が発生しております」と車内アナウンスしていたので、筆者は「なるほど、遅れた理由はこれか」と察知した。

 車内転倒事故でとくに気を付けるのは、高齢の乗客である。いまどきは高齢の人がバスに乗ってきたら、座席に座るまで発車しない(見切り発車しない)のは当たり前の光景だが、ときおり何らかの理由でなかなか着席してくれずに、運転士が困っているといったシーンにも出くわす。

 なお、転倒事故は乗車よりも降車時のほうがよりリスクが高くなる。高齢の乗客のなかには降車するバス停にバスが完全停車する前から席を立ち降車扉に向かおうとする人がじつに多い。排気ブレーキなどを活用し、「なるべく足(フットブレーキ)に頼らず停める」というのが、プロのバス運転士と聞いたこともあるが、どうしても最後はフットブレーキに頼らざるを得ないので、車両が多少前のめりになってしまう。停まる寸前というのはかなりリスクが高いのだが、ブレーキを使うことで次第に速度も遅くなるので、「安全だ」と感じて車内を移動してしまう人がいるようだ。

 ほかの車両との接触事故などで、バス側のダメージが少ないなか、バス側の乗客などにけが人が出るのは、こういった車内転倒事故と考えていい。また、着席していても前方席の背もたれに強くぶつかる危険もあるので、バスの座席に座るときには深く座ることを心がけてほしい。

 台湾などのアジアの国のなかには、路線バスでも座席にシートベルトを用意しているところもある。昔は電車でも急ブレーキをかけると車内は大変なことになったが、最新型になるほど、不思議なほど違和感なくすぐ停車するようになった印象がある。しかし、バスは最新型であってもそうはいかない。

 ただ、車内転倒事故を気にして急ブレーキをかけなければ、それこそ他車だけではなく歩行者や周辺の建物を巻き込んだ甚大な交通事故になってしまう。乗用車であっても、後席でシートベルトを装着せずに乗っているなか急ブレーキをかければ、後席乗員がフロントガラスに身体ごとぶつかることだって十分発生する(実際にこういった事故が何件もある)。

 バスやトラックなど大きなクルマはなかなか急には停まれない。何かのきっかけで急ブレーキをかける可能性がある以上、つねに覚悟してほしい。そんな事情があるからこそ、運転士は事故防止のために万全な運転を心がけているのである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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2019年式トヨタ・カローラ セダン S
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乗りバス(路線バスに乗って小旅行すること)
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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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