BYDもインドネシアにBRTタイプのBEVバスを導入予定
新型コロナウイルスの感染が落ち着き、2022年に久しぶりにジャカルタを訪れてみると、BRTの駅(バス停)のなかで、乗降客数の多いところの一部が多層構造に改築され、上層階にコンビニエンスストアや展望コーナーが設けられるところも出てきた。筆者はこの工事を見ていて、「いよいよBRTもBEV(バッテリー電気自動車)化される、その準備かな」と思っていたのだが、駅(バス停)の整備だけで終わっていた。ただ、車両更新(ICE[内燃機関]車)が進んでいるようには見えなかったので、BEVバス導入はそれでも近いと考えていた。
2024年7月にジャカルタ近郊で開催された「GIIAS(ガイキンド・インドネシア国際オート・ショー)2024」の会場内をまわっていると、商用BEVをまとめて展示しているブースがあった。そこにはBEVトラックのほかに、さまざまなサイズのBEV路線バスが展示されていた。そのなかで目に留まったのがBRTタイプのBEV路線バスであった。
車内を興味深く見ていると、英語の話せる係員が声をかけてきたので、このバスのメーカーを聞くと、「中国のゾントンだよ」と教えてくれた。ゾントンとは、中国・山東省にある「中通客車(客車はバスの意味)」というバスメーカーとなる。ちなみにゾントンのICE車両の連節タイプバスがインドネシアで初めてBRTに導入され、いまも走っている。しかし、導入当初からその品質に疑問を呈する声も多く聞かれていた。実際に筆者も、当該車両に乗っているときに、中開き式の乗降扉が「バタンバタン」とバラバラに開閉するといった不調状態なところを目撃している。
ゾントン製は一般BEV路線バスでも運行されているが、ほかにも一般BEV路線バスではBYDオート(比亜迪汽車)やSAG(ゴールデンドラゴン/金龍客車)といった中国系BEV路線バスが街なかを走っている。ジャカルタ市内で路線バスを実際に運行する3事業者のうちのひとつに話を聞くと、すでに来年、BYD製のBRTバス車両を導入予定とのことなので、ICE車からBEVとなるなかで、BRT車両の中国メーカー車比率が高まっていくことになりそうだ。
ちなみに前述したショー会場でもゾントン製のBRT路線対応のBEV路線バスは2025年デビュー予想としていた。
欧州系ICE車両のBRT(ダイムラー、スカニア、ボルボ)も走っているのだが、恐らく欧州系でBEVバスとなると、現状では中国勢に価格面で勝てる見込みは薄いといえるだろう。「ダイムラーでは、日本市場も含め、バスの価格を大幅に引き下げる世界的な新しい動きを展開していきますので、ダイムラーも含め新興国での中国メーカーBEVバスの動きをこのまま黙って見ているということはないでしょう」とは事情通。
日系メーカーも日本国内でBEV路線バスの発売を最近始めている。規格の問題もあって国内の車両をそのまま海外で販売するということは厳しい。韓国ヒョンデはすでにインドネシアでBEVバスシャシーの販売を進めている。日系バスメーカーも今後、活発な動きを見せてもらえると筆者はおおいに期待しているところである。