車格に対しちぐはぐ感しかない名前に仰天
そして、この当時にリリースされたサルーンはFタイプとなるかと思いきや、予想外のSタイプというネーミング。SSだったり、Sだったり、ほんと脈絡が感じられませんが、一応スポーツとかサルーンのSだと主張する歴史家もいらっしゃいます。
で、このSタイプを完コピ(笑)したのが、フォード傘下にはいって最初にリリースされた2代目「Sタイプ」。リンカーンLSというミドルクラスセダンをベースに、レトロというか昔風のボディを架装しただけで、インテリアのクオリティなどは昔日の面影すらありませんでした。なるほど、アメリカ人がイメージするジャガーとは「こんなにダサいのか!」と頭を抱えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
もっとも、アメリカ国内だけでなく、日本でもそこそこ売れたようで、フォードとしてはホクホクしながら次のモデル「Xタイプ」をリリースしたのではないでしょうか。Sタイプよりもひとまわり小さなボディで2001年に登場したXタイプは、これまたフォードの普及モデル「モンデオ」からシャシーやエンジンを流用。こうした考え方、コンストラクションはサー・ウィリアム・ライオン氏(1代限りでナイトの称号、サーを頂いてます)に一脈通じるわけですが、ちょっと料理の仕方が大雑把に過ぎませんかね。
それまでのXJサルーンの面影を追求した結果、車内空間が犠牲となって狭いのなんの! とりわけ後席の垂直な背もたれやタバコの箱も置けないほどのレッグスペースには筆者自身、辟易した記憶があります。
さて、現行モデルにはFタイプというイカしたクーペがあり、Eタイプの正統的な後継車といえるかと。これには、フォードからPAGへ経営が移り、そのPAGからジャガーを買い取ったインドのタタ・グループの見識の高さがうかがえます。また、フォードと違ってゼロからクルマを作っていますから、ジャガーなのにジャガーじゃない的なちぐはぐ感もありません。
ちなみに、このFのシュッとしたイメージをうまいことSUV化させたFペースはさほど評価が高くありません。これはライバルたちが実績あるシャシーを巧みに流用してSUV化させたのと対照的で、タタにはそのリソースが足りなかったのかもしれません。
いずれにしろ、後世のクルマ歴史家、そしてクルマ好きたちはジャガーのネーミングについては謎、というより混乱しか見いだせないのではないでしょうか。ブランド自体が流転の歴史を刻んできたわけですから、ネーミングの迷走も仕方ないといえばそれまで。ですが、いまは亡きライオン氏はきっと頭を抱えていたりするのではないでしょうか。