この記事をまとめると
■国内では年間1万件前後の道路陥没が起きている
■日本は地震が多くて複雑かつ不安定な地質や地形なので陥没を起こす機会は増える
■ひび割れなどの路面の変化には気を配るべきだ
陥没の原因のほとんどは地下の水にまつわる管の老朽化
九州の博多駅前で起きた道路の陥没は、交通の繁華な都市部でのことで、8年前とはいえ記憶に生々しいのではないか。2020年には東京調布市の住宅街で道路の陥没が起きた。
舗装された道路は快適で安全と思いがちだが、じつは国内で年間に1万件前後の道路陥没が起きているという。そのうち、下水管など水にまつわる埋設された管などを原因とする事例が多くを占める。とはいえ、それ以外の要因もあり、地中の空洞が地下水などの影響で道路近くまで上昇し、地盤が弱まった状況に耐えきれず、舗装路といえども陥没に至るとのことだ。
地下の地質に断層などの少ない欧米に比べ、日本は地殻変動が活発で地震が多く、また温暖で雨量も多いため、複雑かつ不安定な地質や地形になっており、陥没を起こす機会も増える。
当然ながら、電磁波レーダーを使った地質調査が行われ、地下の空洞を探しているが、直接地下の様子を目にできるわけではなく、画像を人間が判断するため、完璧とはいえない。
陥没の原因として多くを占める地下の水にまつわる管は、46万km(地球11周分以上)におよぶとされ、このうち10万カ所以上が老朽化しているので、調査が追い付かないともいえる。
最新技術では、地下を三次元化して見える化し、地下工事を原因とする陥没の予防は進んでいるとのことだ。
空洞が見つかった場合の対処法は、モルタルを空洞に充填する手法とウレタンを注入する方法がある。モルタルはセメントと水と砂を混ぜたもの(コンクリートはこれに砂利が混ざる)で、乾くまでに時間を要する。そのため、交通量が多い道路などでは通行止めの時間が長引く懸念がある。
一方、ウレタンの注入は、小さな穴から充填でき、かつ短時間で作業を終えられる。
地下に空洞を生じさせる地下水の変動は、さまざまな要因で起こる。気候変動の温暖化によって降雨量や降雪量が減ることで、地下への水の浸透が減り、地下水位が下がる。逆に、都市部では空調や工業用水として地下水の使用が制限され、水位が上がることもある。
地面や地下は頑丈で動かない変化しないと思いがちだが、じつは動きのあるものなのだ。
日本は、道路の80%以上が舗装されることにより、地下の様子が分かりにくい。道路の下の地盤について気にかける機会が減っている。しかし、日本の地質は複雑で、思わぬところに空洞が生まれ、それが地面近くに上がっていくと陥没につながる。
クルマを運転していて事前に察知するのは難しいが、舗装のひび割れなど含め、路面の変化に多少の意識をもつのはよいかもしれない。