信じられない世界の運転免許事情
新興国へ出かけ話を聞くと、「運転免許を買う」ということをよく耳にする。正規の手続きを経ないで、正規の運転免許を手にする「裏技」が必ずといっていいほど存在するようなのだ。
話を聞く限りは、運転免許試験場が大変混雑していて面倒で時間もかかるので、おもに富裕層が「タイパ(タイムパフォーマンス)」が悪いとして運転免許を買っているようである。もちろん、筆記試験のために交通法規などの勉強はしないし、クルマの運転も見よう見まねとなるので、公式な運転免許証を持っていても大変危険な状況で街なかでクルマを運転していることになる。
インドネシアでは、とりあえず試験を受けなければならないという点では、まだ安全といえそうだ。
過去に中国において、まだMT(マニュアルミッション)車がかなり多かったころ、運転免許を買った人が街なかでMT車を円滑にシフトチェンジさせて運転することができずに、高速道路などでも円滑な進入ができないなど問題が目立ってきたので、「AT限定免許」が創設されたといった話を聞いたことがある(買えるとの噂もあった)。
ちなみに、駐在などで中国に居住している日本人の場合は、日本語対応した筆記試験を受けるだけで中国の運転免許証が取得できるとも聞いたことがある。ほとんどの企業は交通環境だけではなく、「当たり屋」などの犯罪にも遭いやすいとのことで、中国国内での自動車の運転を禁止しているようだが、ある駐在員いわく「自動車ビジネスに携わっていることもあるのですが、その際に中国の運転免許証をもっていると地元関係者との距離がぐっと短くなります(仲間意識が芽生えるらしい)。クルマの運転はほとんどしませんが、その意味でもつようにしました」と話してくれた。
警察、とくに交通警察の腐敗が有名なロシアでも、運転免許証を買うことができると聞いたことがある。「よくクルマに乗っていると、高級車が凄いスピードで側壁に衝突したりしています。そんな『免許を買ったんだな』と思われるシチュエーションに遭遇することは、ここではそんなに珍しくありません」とは現地事情通。
日本で運転免許証を買うというのは偽造運転免許証となるが(もちろん犯罪行為なのでやってはいけない)、紹介した地域では正規の運転免許証を買うことができるところが大きく異なる。
日本人は個々の技能差は当然あるものの、平均レベルでも運転スキルが世界的に高いといわれることがある。それは正規の運転免許を少なくとも気軽に買うことができず、多くのケースでは時間とお金をかけて教習所に通い、苦労して運転免許証を取得するというシステムが寄与していることも、また否定できない真実なのかもしれない(試験場1発合格を狙う人もまだまだいるが……)。