ひと昔前では考えられなかったようなクルマまで
次は、「日本を代表するショーファーカーもついに!」と話題となったのがトヨタ・センチュリー。ただし、トヨタ公式ではいっさいSUVという言葉は使っておらず、あくまで「新しいボディタイプ」というにとどめています。
とはいえ、厚みの増したボディ、地上高がアップしたフロア、スライドドアにも変更できる大きなドア、頭上スペースがたっぷりと取られた室内と、どこをどう見てもジャンル的にはクロスオーバーSUVといっていいでしょう。しかも、これまでのセダンタイプの名称を「センチュリー(セダン)」と改め、こちらのSUVタイプを堂々「センチュリー」と名乗らせているほど。
そして、ひとつひとつ職人が手彫りをするというホイールの鳳凰エンブレムや、何度も磨き上げるという内装、最高級素材のシート、スイッチひとつで外部からの視線をシャットアウトする窓ガラスなどなど、素材も装備も日本最高峰であることは変わりありません。迫力の増したフロントフェイスなどの威力も相まって、どこへ移動するにもその存在感はものすごいものとなっています。
さて、海外のメーカーでもいつの間にかSUVが登場している歴史あるモデルがあります。
1960年代からアメリカンスポーティカーの代名詞として、かつては日本でも一世を風靡していたフォード・マスタングがSUVのEVとなっていたのにはびっくりですね。その名もマスタング・マッハEで、スポーツカーとしてのガソリンモデルは販売継続しつつ、マッハEは新たなマスタングの可能性を探ります。一方では、企業としての環境問題への責務をまっとうする役目を担っているともいえます。
とはいえ、そのネーミングからして往年のファンの心をくすぐるのがニクイところ。マッハとは、1969年に設定されたマッハ1をはじめ、マスタングの高性能バージョンとして君臨してきたモデルに与えられていたネーミングです。
フォードは日本から撤退してしまったため、マッハEの正式導入はされていませんが、デザインにはマスタングの伝統である縦3スロットのテールランプなどが継承されていたり、88kWhの大容量バッテリーと後輪駆動のモーターで、とんでもない加速を生み出すあたり、新世代のアメリカンマッスルカーをしっかり体感できるモデルとしているところはさすがです。
もう1台、フランスの自動車メーカーであるシトロエンの伝統的セダンだったC5も、最近になってクロスオーバーSUVのC5Xが登場しています。しかも、リフトアップセダンと表現したくなるくらい、さりげないSUVテイストとなっていて、ボディサイズは全高が10mmアップしているのが特徴です。乗り心地もスポーティすぎず、シトロエンらしいしっとり感があるのも魅力となっています。
じつは、このC5Xのインテリアのマテリアルデザイナーとして活躍したのは、日本人の柳沢知恵さん。人が触れるあらゆる部分に、シトロエンの新しいブランドアイコンを表現してほしいというミッションがあったそうで、加飾パネルやシート上部の刺繍、厚塗りプリントといった、気づいた人だけが楽しめるバラエティに富んだシトロエンの新しい表情が新鮮です。どこか、日本の伝統工芸にも通じる質感が感じられるところもあり、ちょっと懐かしい気もちになれるシトロエンモデルです。
ということで、もはやブームではなく定番となったからこそ、昔のイメージからの脱却や新しい時代を先取りするべくSUVへと姿を変えたモデルたち。今後はいったいどうなっていくのか、見守っていきましょう。