この記事をまとめると
■昔と比べてデコトラの存在は目立たなくなった
■実際はデコトラの台数は増えている傾向にある
■デコトラが減ったように感じる理由を解説
トラックの飾り方が変わった
1975年から1979年にかけて公開された、映画『トラック野郎』の大ヒットによって日本中にその存在が知れ渡った、デコトラ。文字どおりトラックをド派手に飾り上げた車両のことを指すのだが、映画を知らない若い世代であっても、デコトラのことを知っているという人は意外にも多い。これまでにもほかの映画やテレビドラマ、そしてコマーシャルなどにも幾多となく抜擢されてきたデコトラであるだけに、その知名度は高いのだ。
そんなデコトラが注目される理由は、単純明快。昼であっても夜であっても、とにかく派手で目をひくからである。そして、見た目のインパクトも凄まじい。刺激的なステンレス製の大型パーツを装着し、大きな車体には絵を描く。そして数多く取り付けられた電飾パーツで、夜も艶やかな姿を披露するのである。
そんなデコトラを見かけなくなったと感じる人たちは、きっとたくさん存在するだろう。派手に飾ったデコトラは荷主や顧客から敬遠されてしまうようになったため、以前のように颯爽と街道筋を駆けまわることが難しくなってきた。それゆえにデコトラが減ったと感じてしまうのも無理はないが、じつのところはそうでもない。むしろデコトラの台数そのものは、昭和の時代より増えているとさえいえるだろう。
街で見かけなくなった理由として挙げられるのが、プライベートのデコトラが増えたという実情がある。仕事車を派手に飾れなくなったことで、趣味でデコトラを楽しむ人が増えたのだ。日本では毎月のようにデコトラのイベントが開催されているのだが、多い時には500台以上のデコトラが集まってくる。昭和のイベントでは数十台という記録が残されているため、数が増えているということ自体はほぼ確実だ。
そして、もうひとつ大きな理由が存在する。それは、デコトラにおける飾りのスタイルが進化しているという部分。昭和の時代では派手さを追い求める傾向が強かったのだが、現在では従来どおり派手に飾り立てることに加え、荷台や見えない部分に手を入れるという、シンプルなデコレーションが注目されているのである。
それはもちろん、デコトラで仕事をするための策。トラックのことを知らない一般の人たちには派手さを感じさせず、愛好家たちの間ではその凄さがわかるというスタイルが、人気を集めているのだ。
一般の人たちは派手だからこそデコトラだという認識を持っているだろうが、デコトラの世界では派手だからいいというわけではなく、要所を押さえてさえいればデコトラだと認識されているのである。
わかりやすくいうならば、派手さから美しさや綺麗さが注目されるようになったのだ。それゆえに、これからは派手さだけではなく美しく綺麗だと感じるトラックにも注目してほしい。そうすることで、令和の時代におけるデコトラの魅力を、肌で感じることができるに違いない。
見た目はシンプルであっても、想像以上の手間や資金が注がれているデコトラも存在する。そのような奥が深い文化であるからこそ、半世紀にもわたって多くのファンを魅了し続けてきたのだといえるだろう。そんな日本が誇る改造車文化であるデコトラは、これからも姿を変えながら根強く発展し続けてゆくことだろう。