この記事をまとめると
■大型トラックはボディの各所に多くのミラーを装備している
■乗用車にも普及していないのと同様にトラックでもミラーのカメラ化は進んでいない
■大型トラックに電子ミラーが普及しない理由を解説
電子ミラーは耐久性や信頼性が低い
トラック、とくに大型トラックはミラーをたくさん装備している。左右のAピラーにはミラーステーにいくつものミラーがマウントされているのを見かけるはずだ。これは左右の後方だけでなく、ボディの両サイドの路面付近、キャブ直前の死角のフォローなど、安全のために必要な装備なのだ。
近年は左右の死角をカバーするカメラやミリ波レーダーなどを装備する大型トラックも増えてきた。けれども、乗用車でもドアミラーのカメラ化があまり進んでいないように、トラックでも従来のミラーのカメラ化は進んでいない印象だ。
これは、乗用車には乗用車の、トラックにはトラックの理由がある。乗用車はカメラから画像処理してモニターに表示するまでのタイムラグにより、実像と比べて遅延が発生することによる違和感がどうしても残っており、その一方でコストの割にはスタイリングの自由度に貢献する程度でメリットを見出しにくいのだ。
一方のトラックでは、電子ミラーは耐久性や信頼性での不安が拭い切れない、というのが大きな理由のようだ。遅延自体は大型トラック必須のバックカメラでも発生するため慣れが解決するものの、さらなる普及には電子部品の特性ゆえの問題が課題となっているのである。
現在、トラックメーカーが採用しているカメラシステムはすべて補助的なもので、メインの後方視界確認はミラーによって行なうようになっている。これはメーカーによって判断はわかれるところだろうが、電子ミラーは物理ミラーよりも耐久性や信頼性が低いことが影響している。
物理ミラーの場合、ぶつけてしまったり、樹脂部品が劣化して壊れるなどがなければ、長期間安定して利用できる。しかし、電子ミラーは、カメラや制御部、表示部などの部品は一定以上の耐久性は確保しているものの、それを過ぎればいつ壊れてもおかしくない。長距離走行を日常的に行うトラックでは、乗用車よりも部品に対する負荷も高く、耐久性を考慮した作りとなっているため、条件も厳しい。突然、後方視界を失うようになったら、走行を続けるのは極めて危険なので、事実上の走行不能に陥ることになる。
そんなことになったら業務に支障を来たすので、トラック事業者はそんなミラーは敬遠したいのだ。トラックメーカーもリスクを考えれば、やたらと電子ミラーを推し進めることはできない。
とはいえ物理ミラーはドライバーから見て反射できる範囲しか確認できないので、カメラとモニターによる電子ミラーも死角を解消するためには役立てられているのが、現状ということなのだ。
いずれ自動運転が普及してくれば、レーダーとカメラによる画像認識で周囲の状況を判断しながら走行することになるから、物理ミラーは廃止され、電子ミラーに統一されるようになるのかもしれない。
しかし、高速道路はともかく、一般道での完全自動運転を実現するのは、かなり先のことになるだろう。ということは、当分は現在の組み合わせが続いていく、ということになりそうだ。