この記事をまとめると
■大型トラックには大きな排気量のエンジンが搭載されている
■トラックにはリミッターが装着されているため速度は90km/hで頭打ちとなる
■大型トラックは空荷でスピードリミッターがなければ速いのか解説する
スーパーグレートのトルクはスーパーカー2台分
現在のところ、大型トラックにはスピードリミッターが装着されているため、90km/hで最高スピードは頭打ちとなるが、もし空荷でリミッターがなければ、どこまで最高速度が伸びるのだろうか。そんな疑問をもつ人も少なくないようだ。
やたらと馬力を気にするクルマ好きも多いが、肝心なのはトルクだ。たとえば新型三菱ふそうスーパーグレートに採用されている6R30型エンジンは、12.8リッターの排気量から421馬力の最高出力と2100Nmの最大トルクを発生させる。この2100Nmというトルクは、比較的メジャーなスーパーカーで例えると2台分に相当するもので、凄まじい駆動力といえる。そうなるとますますトラックでも速さを追求できるだろう、ということになるが、それには問題がいくつかある。
第一に、トラックはレーシングカーと違い、物理的に物体をAからBへと移動させるのが目的であって、絶対的な速さを追求していない。しかも、最大積載量まで荷物を積んでも、発進加速や登坂能力などを確保するため、加速性能に余裕をもたせた構成になっている。さらにボディは大きく、おまけに荷物を最大限に積み込めるようキャビンは短く高くなっている。そのため、空気抵抗は乗用車の比ではないほど大きいから、高速域では空気抵抗がものすごくて、かなりパワーを食われてしまうから、最高速は伸びない。
ターボチャージャーの効率化などで1万3000ccと排気量はかつてよりも小さくなったものの、乗用車と比べればピストンやコンロッド、クランクシャフトといった腰下の摺動部品の大きさと重さは相当なもので、エンジンの最高回転数は2500rpm程度となってしまう。そのため、トランスミッションを多段化しても最高速度はそれほど伸びないのだ。
それでもトラックのボディやエンジンをチューニングして、最高速度の限界に挑戦した記録も過去にはある。実際にボルボは2016年にトラックの最高速度記録に挑戦している。
ベースとなったのは同社のトラクターFHだ。エンジンは13リッターの排気量のまま、2400馬力、6000Nm(!)までチューニングされ、ローキャブ仕様となったボディを276km/hまで引っ張ったのだ。
また、ドラッグレースのエキシビジョン用に製作された、“ジェットドラッグスター”にはトラックのボディを利用したものがいくつかある。そのなかでも、最速のトラックは戦闘機のジェットエンジンを3基も搭載しており、その総合出力は3万6000馬力! 最高速度はなんと605km/hを誇るのだ。
ちなみに、ジェットエンジンを搭載した車両はタイヤを通して駆動・加速するのではなく、ジェットエンジンの推進力で加速する。そのためゼロスタートからの加速は二次曲線的なもので、目が付いていかないほど強烈だ。
このようにトラックの形でも、常識の範疇を超えた極端な改造をすれば、最高速度を追求することはできる。けどもそれは、とても公道を走れるような仕様ではなくなってしまうので、夢物語の範囲から出ることはないだろう。