この記事をまとめると
■物流・運送業に働き方改革関連法が本格適用
■モーダルシフトのひとつとしてフェリーが活用されている
■メリットは大きいものの、いまだ解決できていない問題も
すべてのドライバーが等しく利用できるよう改善すべき
いよいよスタートした働き方改革関連法の物流・運送業への本格適用。これを受け、トラック輸送の代替手段として、長距離フェリーの利用が活況となってきている。このトラックの長距離輸送をフェリーへとシフトしようという動きは、トラックドライバーの労務負担を軽減させ、かつ輸送中のCO2も削減させる国土交通省と政府の構想「モーダルシフト」のひとつでもある。
2021年に就航した「東京九州フェリー」は、そんな2024年問題解決への動きのなか登場した長距離フェリー。横須賀(神奈川県横須賀市)と新門司(福岡県北九州市)を結ぶ新たな航路で、976kmの距離を約21時間で航行する。
首都圏と九州を結ぶフェリーは、東京の有明と新門司間を航行する「オーシャン東九フェリー」も運航しているが、こちらは東京湾の最奥部である有明に拠点があることや、四国は徳島県の徳島新港へ寄港することからおよそ35時間という長い航行時間となっている。その時間を14時間も短縮できる東京九州フェリーは、長距離を駆け荷物を運ぶトラックドライバーにとってはまさに待望の航路。また、首都圏と九州を航行するフェリーがふたつに増えたことにより、その区間が複線化されたというメリットも大きい。
東京九州フェリーは、大型トラック約154台、乗用車約30台を積載できる全長222m、総トン数1万5515トンの「はまゆう」「それいゆ」の2隻体制で日曜祝日を除く毎日運航。午前0時前に横須賀港と新門司港をそれぞれ出港し、翌日午後9時頃に目的地に到着。夕方頃に集荷した荷物をトラックごとフェリーに積み、翌々日には配送できるという「集荷後3日目配送」という近年の長距離輸送のトレンドにも対応したダイヤになっている。
その物流の現場の利便性も反映し、同航路の利用率は就航以来右肩上がりに上昇。運輸業界大手の佐川急便も首都圏〜九州間の宅配便輸送に同社のフェリーを活用している。また、21時間という航行時間もドライバーの休息には長すぎず短すぎず、「これまで4時間に1回休憩しながら高速道路を自走していたが、フェリーは体をゆっくり休めることができてありがたい」というドライバーの声もあった。東京九州フェリーに限らず、長距離フェリーにはトラックドライバー専用のドライバーズルームや食堂、浴場も完備されているため、ドライバーの休息には至れり尽くせりの環境になっているのだ。
2024年問題解決への業界の取り組みも後押しし、東京九州フェリーのみならず、関西〜九州の便など長距離フェリーの需要は増加し続けている。日によっては予約がすべて埋まり、キャンセル待ちで一旦港に入ったものの、空きの枠は出ずにやむなく自走するトラックもいるという。しかし、フェリーの需要が増えているとはいえ、まだコスト面で利用を控えている運送会社も少なくない。
また、ドライバーにとっても「フェリーに乗ると手取りが減ってしまう」という給与面の問題が一部ではあるという。長距離輸送におけるフェリーの利用=モーダルシフトは2024年問題を解決させるための有効的な手段。すべてのドライバーが等しくこれを利用できるようにするためには、運送料金とドライバーの賃金の適正化も業界全体で実現させなければならないだろう。