この記事をまとめると
■ドリフトをした際に出るタイヤスモークの正体は水蒸気と油分が蒸発したもの
■コースサイドでドリフト競技を見ているとタイヤのカスが衣類に付着する
■タイヤの自然発火温度は300℃以上なので滅多なことがない限り引火しない
モータースポーツで見られる「タイヤの白煙」の正体とは?
いきなり暴論めくが、モータースポーツのなかでドリフト競技は特殊だ。ほかのモータースポーツは基本的に速さを競うものだが、ドリフトにおいては派手さが魅力となっている。
その象徴といえるのが派手さにつながるタイヤスモークだろう。
速さを求めるのであれば、タイヤを最大限にグリップさせたいのだが、タイヤスモークというのはタイヤがスリップしているからこそ生まれるわけで、わざとタイヤをグリップさせないことがパフォーマンスにつながるというのは、ドリフトの独特な部分といえる。
ところで、ドリフトを初めて観戦すると、モクモクと湧き上がるタイヤスモークをみて「タイヤが燃えている!」と興奮してしまうかもしれないが、残念ながら(?)あの白煙はタイヤが燃えているわけではない。
タイヤの主要な素材であるカーボンなどの混ざった黒いゴムが燃えたときには、大抵の場合において「黒煙」を発生する。そして、それは人体に有毒なものとなることが多い。しかしながら、ドリフト競技の会場では「タイヤスモークを吸わないように!」といった注意喚起はない。
なぜなら、タイヤスモークというのは、タイヤに含まれる水分や油分が蒸発したものだからだ。逆にいえば、タイヤスモークが白いのは水蒸気が主体だから……といえる。油分も含まれているので無味無臭というわけではないが、水蒸気であるならば人体に害を与えるものではないということも理解できるだろう。
ドリフト競技を観戦した経験があれば実感・体感しているだろうが、コースに近い場所で見ていると、荷物や服に小さな黒いつぶつぶが付着することがある。あれはタイヤカスであり、タイヤは燃えているのでなく、細かく千切れている証ともいえる。
ちなみにミシュランタイヤによると、タイヤの引火点は288℃、自然発火温度は315℃という燃焼性パラメータをもっているとのこと。よほど強力な火種がない限り、「タイヤは簡単に着火しない」のだ。
一般論として、ラジアルタイヤの適正温度は走行中で60~80℃といわれる。ドリフト走行であっても表面温度が300℃に達するなんてことは通常ではあり得ない話で、タイヤスモークはゴムが燃えているわけではないのである。