荷物満載でも鋭い加速! 疲れない静粛性! 高い安定性とメリットだらけ
当初の予定より遅れ10月に発売されるN-VAN e:に、テストコース内で事前に試乗する機会があった。その出来栄えはどうか?
結論を先にいうと、ホンダのEV第2弾であるにもかかわらず、EVとしての完成度が非常に高い仕上がりであった。さらに、商用とはいえ乗用にも十分に利用でき、商用車という過去の印象が払拭されている驚きがある。
イグニッションスイッチを押し、シフトレバーの代わりにホンダのハイブリッド車(HV)で採用されている、押しボタン式のシフトでDを押す。このボタンはDとBの切り替えも兼ね、Bにすると回生が強まる。
エンジン車のN-VANが採用しているレバー式から、今回の押しボタン式への変更は、これにより足もとをより広くでき、車内で運転席から荷室への移動などしやすくなるという働きやすさを重視した結果だ。
アクセルを踏み込むとわずかに軽くペダルを押しただけで、スッと動き出す。その動きはじつに軽やかで、慣れぬうちはもしかすると飛び出すように発進してしまうかもしれない。それほど出足がよく、勢いがある。
まさにトルクの大きいモーター駆動ならではの威力だ。これは、300kgの最大積載量となる荷物を満載したときも、「よっこらしょっ」という重い出足ではなく、瞬発力を感じさせる出だしになるはずだ。エンジン車のN-VANと比べると、ここがEV化の最大の利点といえるのではないか。発進と停止が繰り返される、宅配業などで重宝するだろう。
市街地走行はもとより高速道路での追い越し加速といった場面でも、わずかにアクセルペダルを踏み増せばスルスルと速度を高める。エンジン車の、エンジン回転数が高まり、うなりを上げ、そこから速度を上げていくといったもたつきや遅れは皆無だ。
当然ながら走行中の静粛性に優れる。商用車は一般に遮音機能が十分でないため、車内騒音がそれなりに大きいのが常だ。しかしEVであればまるで乗用車のように快適である。働き方改革の視点からも労働環境は改善されるはずだ。
さらに、重いバッテリーを床下に搭載するので走行安定性は抜群だ。そもそも、エンジン車のN-VANも操縦安定性に優れ、単純比較ではすぐに体感しにくいかもしれない。だが、テストコース内のワインディング路で旋回速度が高くなった印象があり、それだけ安心してアクセルを踏めるのは、低重心で車体の傾きも抑えられ安心が高まるせいだろう。
仕事のしやすさ、余暇の道具の積みやすさといった面で商用車らしさに優れるだけでなく、運転や乗り心地に満たされる商用バンは、EV以外には考えにくいのではないか。そのうえで、クルマとして魅了させるのがN-VAN e:の魅力である。
将来的には乗用の軽EVも出てくるだろうし、その折には、福祉車両が追加されることを期待したい。低重心で静粛性に優れ加減速が滑らかなEVこそ、障害をもつ人にやさしいクルマであり、介護や介助する人にも扱いやすいクルマであるからだ。
次々に夢の広がるEVであった。
ホンダeで最先端に挑戦したホンダが、EVの本質を極めたのがN-VAN e:といえ、第3弾、第4弾へとさらに期待が膨らむ体験となった。