この記事をまとめると
■タクシー運転手は乗客と「野球」と「政治」の話はしないようにと教えられている
■最近は積極的に話しかける運転士は減り会話をしたくないという利用客も増えている
■海外では話し好きのドライバーが多い一方でライドシェアドライバーはほとんど喋らない
タクシードライバーは客との会話にも気を配る
筆者は、タクシー業界の新人運転士の研修時の話として過去に聞いたことがあるのだが、「タクシーの車内で乗客と会話を交わすのは構わないが、政治とプロ野球の話はしないように」と新人運転士に講義しているとのことであった。
たとえると、巨人ファンの運転士のタクシーにたまたま乗り合わせた阪神ファンの乗客がラジオの巨人対阪神戦のナイター中継を聞きたいというので、運転士がラジオをつけたとする。試合の流れは巨人優勢となっているなかで運転士が思わず対戦相手である阪神についてあまりよくないことをいってしまうと……、この先どうなるかは読者のみなさんもだいたい想像がつくだろう。
さすがに関西弁を話す人が乗ってきて阪神戦を聞きたいとなれば、だいたいの運転士は警戒して様子を見るのだろうが、トラブルというものは往々にしてちょっとした判断ミスで起こるもの。
「触らぬ神にたたりなし」ということで、乗客とプロ野球について話すときには慎重に行う云々以前に、「控えるように」となっているらしい。これは政治の話でも同じ。いまどきは政府や政権与党に批判的な人が多いようにも見えるが、すべての人が同じ考えという訳ではない。運転士が不用意に政府や政権与党に苦言を呈する発言をした結果、大なり小なりトラブルになることも多いようだ。
ただ、ひと昔前にはせいぜいプロ野球と政治の話ぐらいに気をつければよかったのだが、多様化の進む現在ではそういうわけにもいかないようだ。
少々話は逸れるが、筆者の近所の人が所有車を入れ換えたことがある。新車に見えたので、「新車買われたのですか?」と聞くと、「いやいや、これ新古車(登録済み未使用中古車のこと)なんですよ」と返答され、自動車メディアの世界に身を置くものとして不用意な発言をしてしまったことを後悔したことがある。
また、とあるメディアでは、「そもそも相手が男性なら彼女、女性なら彼氏がいるのかいないのかを聞くこと自体いかがなものか」という前提であったが、日本よりはるかに多様化の進むアメリカでは、必ずしもパートナーが「異性」とも限らないので、無闇やたらに聞くべきではないとされていると紹介されていた。