伝説のABCトリオってじつはソコまで人気じゃなかった? いま軽2シータースポーツが「コペン」しか存在しないワケ (2/2ページ)

コペンとS660の登場で軽スポーツへのニーズは高まっている

 これらのモデルが1990年代半ばで生産を終了して以来、軽自動車には2シータースポーツモデルは消滅していたが、21世紀に復活することになる。平成のABCトリオが話題を集めていた時期には、蚊帳の外にあったといえるダイハツが、このカテゴリーに参戦したのだ。初代コペンの生産を始めたのは2002年のことであった。

 4気筒DOHCターボ、電動開閉式ルーフといった軽自動車としては超高級といえるメカニズムをまとったコペンは、2000年代の軽スポーツシーンで孤軍奮闘。2012年8月に生産終了するまでの間に、輸出仕様も含めて累計6.6万台が生み出された。

 平成のABCトリオの合計と、初代コペンの累計生産がいずれも6.5万台強となっているのは、おそらく偶然ではないだろう。軽スポーツというカテゴリーのモデルを「新車」で購入しようとするユーザー数は、それくらいしか存在しないということを示しているのではないだろうか。

 ちなみに、2015年4月から2022年3月まで販売されたホンダS660の累計生産台数は3万8916台。ほとんどビートの累計生産と同規模であることを思うと、やはり「この手」の軽2シータースポーツを新車で買おうというホンダファンの総数は一定規模なのかもしれない。

 このように、市場がある程度で飽和すると考えると、軽2シータースポーツが登場しては消えていくのも納得できる。

 ただし、悪いニュースばかりではない。2014年に発売され、現在でも新車購入できる唯一の軽2シーターである2代目コペンの累計販売台数は、ダイハツ・ブランドが4万5844台、2019年に追加されたトヨタGRブランドは7412台で、合計5万3256台となっている(2024年7月時点)。

 S660と合わせて、平成の終わりころから令和にかけての軽2シーター市場においてしのぎを削った2モデルで9万台を超えるマーケットを創出したということは、軽スポーツへのニーズは高まっていると見ることもできる。

 もっとも、ダイハツがモビリティショーで示したコペンの未来像は、軽自動車枠を飛び越えたボディサイズで、1.3リッターエンジンを縦置きにしたFRのオープン2シーターとなっていた。コペンが軽自動車を卒業してしまうとなると、軽2シータースポーツは新車で購入できない時代がやってくるかもしれない。

 とはいえ、S660とコペンの相乗効果で軽2シータースポーツに市場規模が10万台レベルまで成長したのであれば、このカテゴリーを見捨ててしまうのはもったいない。一定の空白期間はあるかもしれないが、ふたたび軽2シータースポーツが盛況となる時代となることを期待したい。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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