アジアで普及が進むEVバスの日本導入にちょっと待て! 特殊な環境にある日本の路線バス事情 (2/2ページ)

どうなる? 日本の路線バス

 日本でもBEV路線バス導入を検討する理由としては、軽油から電気となることでの負担減や、メンテナンスコスト削減などランニングコストが減らせる点で注目されているようである。ただ、車両価格や車庫内での充電施設設置など、初期導入コストがICEバスよりかなり割高になってしまうのが実情だ。そこで、数台をまず「お試し」として導入して様子を見ることになっているようだ。

「初期導入コストの割高感は、ランニングコストで回収できるといわれています。しかし、私が聞いたところでは、確かにメンテナンスや燃料コストの削減はできるものの、車両寿命が8〜10年というのがネックになるとのことです。つまり、トータルコストで見ても、BEVバスはICEバスより『お金がかかる』というのです。今後、この傾向は、部材費高騰で車両価格の上昇傾向もあり得るので、目立ってくるのではないかとの話もあります」とは事情通。

 また、現状では環境負荷の低い新型車両を都市部の大手事業者が新車で導入し、多少余裕をもたせて手放し、その車両を中古車として地方の事業者が購入することで、全国的に環境負荷の低い車両を広く普及させようとしている。

 地方の中小、零細事業者が、高価なBEVバスを新車で導入していくことは、現実問題として難しい。ただ、車両寿命が10年ともされるBEVバスが、いまのICEバスのように都市部で使用したあと、中古車として地方部で導入されるのかというのも、現状では不透明な部分が大きい(ICEバスは少なく見ても車両寿命は20年とされている)。

 ただし、ICEバスに比べれば飛躍的に部品点数が少ないので、部品交換などをきちんと行えば、いまのICEバスほどのロングスパンでの使用も十分可能との話も出ている。この点に関しては「諸説あります」というのが現状のようである。

 なお、我々ユーザー側の問題としては、このようななか普及促進に拍車がかかれば、ICEバスのそれより多額なBEVバス導入のための補助金、つまり公費負担の増大、もしくは運賃上昇という流れも招きかねない。

 諸外国では、路線バスは自治体などによる公費運行が一般的であり、さらに車両電動化を進めるにあたり、新たに自治体系バス事業者の創設なども行われている。日本でも自治体運行という形態もあるが、実際はその多くが民間事業者にて路線バスを運行している形態をとっている。じつはこういった国は珍しいのだ(しかもその数がかなり多い)。

 果たしてBEVバスの本格導入が必要なのか(日本メーカー製のICEバスの環境性能の高さはいまさらいうまでもない話)、ICEバスの本格HEV(ハイブリッド車)化の是非、そして従来のバス事業の在り方など、現場に寄り添ったきめ細かい議論を繰り返し、将来に日本の路線バスの方向性を決めてほしいと筆者は考えている。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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愛車
2019年式トヨタ・カローラ セダン S
趣味
乗りバス(路線バスに乗って小旅行すること)
好きな有名人
渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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