運転士不足に客の減少で存続危機の路線も多数! バス業界を取り巻く問題解決に立ちはだかる「古く時代に合わない規制」 (2/2ページ)

都市部より地方のほうが路線バス復活の兆しあり

 シンポジウムに参加し意見を述べたバス事業経営者はいずれも、業界では革新的な発想で企業経営を行っていることで有名な人ばかりであった。一般的には「昭和の香り」を引き継いでいるような保守的傾向の強いバス業界のなかにあっては、異彩を放っているといってもいいだろう。

 都道府県庁所在地や地方の有力都市など、複数の事業者が乗り入れている地域では、程度の差こそあれ、競争状況にもあるともいえるので、事業者間の関係はけっして良好ではないというのは一般的な傾向。そのなかシンポジウムで聞かれたのが、同一地域内でのバス事業者間の連携強化である。すでにその事例は全国で多々見受けられるのだが、これは「いまの難局を一致団結して乗り切ろう」という流れだと筆者は理解している。

 自動運転バスについても、数年先には一般市街地道路で導入予定するといった話がある。しかし、大都市の事業者は自動運転バスを導入したところで、「いまおかれているバス業界の問題」解決の糸口がつかめていないように見えるのが実情だ。むしろこの手の問題は、地方のほうが解決へ前向きに向かっている姿勢がうかがえた。

 また、シンポジウムのなかでは、地方ではバスの需要が戻りつつあるというのである。地方都市といえば、生活移動手段ではマイカー依存度が高く、公共輸送機関は衰退の一途というのがお決まりのイメージであったので意外なものであった。

 背景にあるのは、マイカー依存度の高い地方部でも、運転免許を取ろうとしない若者が増えているとのこと。シンポジウムでは「地方の大学に入学が決まれば、運転免許を取得してクルマで通学するのが当たり前のような時代があったが、いまはバス通学する学生が増えております。また、少子高齢化傾向は今後も続くので、運転免許を返納した高齢の人たちによる利用増も見込める」とのことであった。しかし、いままでのように需要が増えたから単純に路線や運行本数拡大とか、大型や連節バスの積極導入ということは、事業者の懐事情もあり現実的ではない。

 いままでのようなバス車両では、運転免許の問題も出てきて、「働き手不足」が大きな壁となる。そこで普通運転免許で運転できるような車両で、しかも時刻表にとらわれない、需要のあるときにだけ運行する「オンデマンドバス」のようなスタイルでのサービス拡大を模索すべきとの意見も出ていた。

 少子高齢化が進むのは都市部でも同じ。全国津々浦々高齢化は進んでいくのだから、公共輸送機関利用回帰の傾向は全国的に同じといえるだろう。しかし、いまのペースではかなりの地域で公共交通機関(とくにバス)空白地帯というものの発生も危惧されている。

 そのなかで提案されたのが、いまのタクシー会社主導ではなく、まさにご近所で協力し合うようなライドシェアサービスの実現である。マイカーをもっているご近所さん同士でマイカーのシェアリングを行うというものである。需要が回帰したからといって、バス事業者に運行拡大を要求するのではなく、利用者サイドで自力による輸送手段を確保するということも今後は必要かもしれない。

 いろいろと斬新なアイディアが出てきたが、それを阻むのがさまざまな規制である。安心・安全な運行を確保することには必要なものだが、多くは日本が現役世代で溢れ、まだまだ元気で「これからまだまだ成長する」といった時代に整備されたものも多いので、いまの日本の身の丈にあったものへ変えていくことも大切なことであると感じた。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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愛車
2019年式トヨタ・カローラ セダン S
趣味
乗りバス(路線バスに乗って小旅行すること)
好きな有名人
渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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