クルマ好き大好物のブレーキパーツ「モノブロックキャリパー」ってなんだ? 値段「バカ高」でも使うメリットとは (2/2ページ)

軽くて剛性のあるキャリパーだがコストの高さがネック

 前述のように通常のキャリパー=2ピースキャリパーは、「たい焼」のように両サイドから貼り合わせて、ボルトで結合させているだけ。そのために強い油圧がかかると、キャリパーが広がろうとして、ピストンを押す力が逃げてしまう。

 モノブロックにすれば、もともと一体なので剛性は非常に高く、ハードブレーキでもキャリパー本体の広がりや変形を抑えられ、ブレーキペダルを踏みこんだときのタッチやリリース時のフィーリングが良好になる。コスト度外視のレーシングカーからモノブロックキャリパーを採用するマシンが増えてきた。

 ただし、キャリパーの剛性だけの問題でいえば、アルミモノブロックキャリパーよりも、安価なスチール製キャリパーのほうが有利だ。ごつく作れば2ピースキャリパーだって十分な剛性は出せるが、どちらも重くなってしまう。ブレーキ=バネ下重量の増加は、タイヤの接地性にも大きく影響するので、ブレーキの容量と剛性はほしいが、大きくて重たいキャリパーはデメリットしかない。

 そこで、軽くて剛性のあるキャリパーを追求していった結果として生まれたのが、モノブロックキャリパーというわけだ。

 そうしたモノブロックキャリパーの利点とトレードオフになったのは、ずばりコスト。大きなアルミブロックから削り出して作るので、まず材料費が高くなる。そしてピストンホールや油圧経路を切削加工していくためには、特殊なマシニングセンタ(自動工具交換装置を備えた工作機械)が必要。部材が高くて、工作機械が高価で、量産性に難があれば、出来上がった製品は当然高コストになってしまう。

 たとえば、トヨタのGR86用の純正オプションである「GRモノブロックブレーキキット」(フロント4ポット、リヤ2ポット)は、一台分で55万円の設定。これでもモノブロックキャリパーとしては、リーズナブルなほうだ。

 軽くて高剛性なモノブロックキャリパーは、ハードブレーキを頻繁に必要としながら、デリケートなペダル操作ができるドライバーには、高いコントロール性を安定的に発揮できるので、心強い武器となり、ブレーキ操作に余裕をもたらしてくれる素晴らしいものだが、そうでない人には、宝のもち腐れになる可能性も十分あるシロモノだ……。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

愛車
日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)
趣味
-
好きな有名人
-

新着情報