中国メーカーもBEVだけでは限界を感じるタイ市場! PHEVを普及させようにも「日本車」と「ディーラー設備」という2重の壁が立ちはだかる (2/2ページ)

BEV専門ブランドとして運営していくほうが賢明か

 東南アジアで目立ってBEVの普及が進んでいるのがタイ。首都バンコクでは間違いなく東京よりもBEVを見かける。そしてその中心は中国メーカー車となっている。

 BYD以外では、GWM(長城汽車)やMG(上海汽車系ブランド)などが中心となるが、これらメーカーはICE車もラインアップしている。バンコク市内で見ていると、タイの自動車ショーではこれら以外の中国系ブランドも目にするが、頻繁に街なかで目にするのはBYD、GWM、MGそしてNETA(ネタ)くらいである。

 仮にこの4ブランドを中国系主力ブランドとすると、BYDもPHEVでもいいのでICE車がほしいところだなぁ……という雰囲気もあるのだが、そこにはある壁があるとは事情通。「すでにタイ国内ではディーラーネットワークをかなり構築しているBYDですが、取り扱いをBEVのみとしていたようで、各ディーラーのサービス工場にはエンジンオイルの交換で発生した廃油処理施設など、ICEに対応した設備がなく、施設整備に金銭的コストや時間がかかることが問題になっているとも聞きます」と話してくれた。

 中国国内では、そもそもBYDオートはICE車からはじめているので、すべての4S(日本のような整備工場も持つ店舗)店がとまではいえないだろうが、ある程度歴史のある店舗ならば、過去のICE車のお客もいるだろうから、ICE車対応施設も残っているものと考えられる。

 日本国内のBYDでは、ディーラーネットワークの構築を始めたばかり。まだいまならそれほど手間なくPHEVの取り扱いも手を出しやすいといえるだろう。ただ、HEVではトヨタを中心とした日本車が、国内では圧倒的強みをもっている。また、三菱アウトランダーなどの成功事例はあるものの、日本ではPHEVをHEVと比較してしまう傾向も高いので、割高感が目立ってしまう、結果的にPHEVとHEVの両方をラインアップしているケースでは、PHEVの売れ行きはいまひとつ元気がないように見える。

 上海汽車系ブランドやGWMでは、タイやインドネシアでHEVをラインアップしているが、このカテゴリーは日本車の十八番なので、日本車優位な状況を大きく変えるような状況にはなっていない。

 筆者としては、中国系ブランドはBEVのみとしてイメージを定着させたほうがいいと思うが、それにはやはり時間がかかってしまう。かといってPHEVなどでラインアップを広げると、ブランドイメージは薄まってしまうだろう。仮に性能で日本車に勝っていたとしても、世の中ではHEV=日本車優位のムードが出来上がってしまっているので、PHEVを投入しても中国車がいまのBEVほどの存在感を示すことは難しいだろう。

 すでに中国メーカー同士でBEVの乱売傾向が目立っているタイで、今後、どのような動きになっていくのかを注意深く見ていったほうがいいだろう。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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