サンダルのような気軽さがウケた!
さて、日本初の軽自動車となる「オートサンダル号」が販売されたのは1952年12月と伝わっている。エンジンは空冷単気筒で、全長は約2.8mと当時の規格よりやや小さく、最高速度は60km/hだったという。令和の基準でいえば、ミニカーや超小型モビリティに近い乗り物だったといえそうだ。ちなみに、エンジンの始動はキック式だったというから、かなりプリミティブで二輪車寄りの四輪車ともいえるだろう。
それでも、国民がサンダルのような気軽さでクルマを運転・所有できるようにしたいというオートサンダルの思いが伝わったのか、およそ2年間で約200台が製造された。自動車メーカーになることを目指し、多くの企業がチャレンジした同時代には、プロトタイプを作って終わってしまうようなプロジェクトも少なくなかったなかで、日本初の軽自動車は立派に量産されたのだった。
なお、筆者が把握している範囲でいえば、規格の全長・全幅を目いっぱい使った軽自動車として初めて量産されたのは、1954年に日本自動車工業から販売された「ニッケイタロー」だ。こちらは全長2950mm・全幅1290mmで、エンジン排気量は358ccだったと伝わっている。
そして、冒頭でも記したように、現存する自動車メーカーとして最古の軽自動車となるのが、スズキ(当時は鈴木自動車工業)が1955年にローンチした「スズライトSS」だ。ボディサイズは全長2990mm・全幅1298mmで、排気量は360cc。日本初のFF方式を採用し、四輪独立懸架サスペンションも与えられるなど、最新テクノロジーから生まれた意欲作だった。
余談だが、スズライトSSは4人乗りのセダン(乗用車)だったが、その姉妹車としてライトバン仕様の「スズライトSL」も同1955年に発売されている。こちらは3人乗りとなるが、税制で有利な貨客兼用車とすることで軽自動車を普及させようという商品企画の狙いは、のちの初代アルトに通じる部分もある。名実ともにスズライトはスズキのルーツといえるのだ。