売り方からメンテまで異例ずくめ! 速さでポルシェを唸らせたR35GT-Rもついに終了! 伝説だらけの歴史を振り返ってみた (2/2ページ)

さらなる高性能を追求したNISMOが登場

2014年モデルから「GT性能」と「R性能」を棲みわけして開発

 その問題に対して、2013年4月に商品企画責任者に着任した田村宏志氏は快適性の「GT(グランドツーリング)性能」と速さの「R(レーシング)性能」にわけ、前者を基準車、後者をNISMOとし、それぞれの方向で極めていくスタイルへと転換した。

 とくにスーパーGTのノウハウが盛り込まれた新たなカーボンを多用したエアロパーツを装着し、よりスポーティなルックスとさらなる高性能を得たNISMOは多くのファンに歓喜をもって受け入れられた。ニュルブルクリンクサーキットのタイムも7分8秒6まで短縮している。

 3度目の大きな進化は2016年に登場した2017年モデル。前任者の水野氏は10年目の節目にフルモデルチェンジを予定していたと噂されるが、実際はビッグマイナーチェンジに留まっている。

 それでも基本骨格に変更はないが、Aピラー周辺には補強(北米のロールオーバー基準対応)が加えられ、前後の剛性バランスを最適化するとともに、ドア/ルーフ/トランク以外の外装パネルを刷新した。インテリアはダッシュボードからセンターコンソールまでを新設計。高級感あるデザインはフルモデルチェンジ級といって差し支えない。

筑波サーキットのタイムアタックで国産車として初めて1分切りを達成

 同時にサスペンション/トランスミッションも大幅にテコ入れされ、ドライブフィール/シフトチェンジのスムースさは一層洗練さを増し、世界のプレミアムスポーツに負けず劣らずの上質感も手にいれた。

 2020年モデルではNISMOのルーフ/フロントフェンダー(ダクト付き)がカーボン化され、ブレーキも新設計のカーボンコンポジットのローターを装着するなどさらなる変更が図られた。軽量化とバネ下重量のさらなる低減が図られたことで、姉妹誌『CARトップ』が主催する筑波テストで国産量産車として初めて1分切り(59秒361、2024年モデルでは59秒078まで短縮した)を果たしている。

 ファイナルとも噂された2022年モデルでは、GT性能を極限まで突き詰めたTスペックが登場。専用色のミレニアムジェイドとミッドナイトパープルを纏った100台の限定車(最終的には120台まで増産)には、2700人以上の応募があった。

 NISMOはボンネットにドライカーボンを採用。新設定されたスペシャルエディションには各部品の重量バランスの公差を整えた専用エンジンを搭載。性能面だけでなく、フィーリングまで研ぎ澄ませて完成度が高められた。

2024/2025年モデルはファンへの感謝を込めたファイナルモデル⁉

 最終型となる2024年/2025年モデルは個人的には日産からGT-Rファンへの感謝の気もちで生産されたファイナルモデルだと思っている。もちろん、「ドライビングプレジャーの追求に終わりがなく、進化を続けることはGT-Rの宿命である」ことは重々承知しているが、わざわざ社外騒音規制をクリアするマフラーを新たに開発したり、前後バンパー/リヤウイングを一新してまで、作り続ける理由はなかったはずだ。

 そのため、2022年がファイナルになる可能性は十分あった。ただ、待ち望んでいたファンの思い、そして初代のハコスカ時代から日産自動車に脈々と受け継がれる「GT-Rだからやろう」という気もちや熱い思いが最終的な継続の決断に至ったひとつの理由だと考えられる。

 2025年モデルはメーカーが語るように「史上最高のGT-R」へと昇華した。いまあるパッケージでできることは、すべてやり尽くしたと思えるほど乗り味も洗練され、クルマとしての完成度も抜群だ。

 ただ、個性という点ではどうだろう? 欧州のスポーツカーと比べて「GT-Rらしさ」は浮き彫りになるだろうか!? 日本酒に例えるなら最新モデルが米を磨いて香りとうま味を凝縮した純米大吟醸で、初期モデルは同じ米だが、うまみはありながら雑味も癖になる純米酒といったところ。どちらも魅力的だが、いまとなって初期モデルの荒々しさに後ろ髪を引かれるのは、ないものねだりなのかもしれない。


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