まるで事故ったクルマみたいなタイヤの切れ角! ドリ車の定番「切れ角アップ」チューンを公道でやるのはアリ?

この記事をまとめると

■日本発祥のモータースポーツとしてドリフトは世界中で人気が高い

■切れ角をアップするとコントロールをしやすくなるメリットがある

■車検を取得することを考えるとかなりハードルが高いカスタムのひとつだ

切れ角アップってなに?

 日本発祥のモータースポーツとしてアメリカだけでなく、ヨーロッパやロシアなど世界的な人気になっているのがドリフト競技だ。もともとは峠道でタイヤを滑らせながら走っている走り屋たちから生まれたもので、今はサーキットで意図的にリヤタイヤを滑らせながら走行。その角度、速さ、審査ラインを正確にトレースできているかなどを競う採点競技として普及している。

 そんな競技に出場するには、もちろんそれに適したクルマが必要であり、そのほうが有利なのはいうまでもない。そこでドリフトに適したチューニングが生まれた。現在は1000馬力以上の出力を誇るパワーチューンが主流。どんなシチュエーションからでもリヤタイヤをホイールスピンにもち込める圧倒的なパワーは、ライントレース性や速さ、ミスのリカバリーなど幅広く走りを支えてくれるのだ。

 そして、パワーと同じくらい重要なのが切れ角アップチューンだ。

 ここで言う切れ角とは、ハンドルを切ったときのタイヤが切れる角度のこと。大きく切れるほうが深いドリフトアングルになったときにもコントロールができる。ここで切れ角が浅いと、深いドリフトアングルになったときに、フロントタイヤをリヤタイヤが追い越してしまいスピンしてしまいやすい。そこで切れ角アップが重要なチューニングとして進化してきた。

 初期のころはタイロッドを加工する程度だったが、現在では海外製のワイズファブなど、専用ナックルごと投入する場合が多い。この手の製品はタイヤが90度近く切れるほどの切れ角を実現するもので、ドリフト競技では高いシェアを誇っている。また、自作のオリジナルパーツで走っている場合もある。

 FDJで活躍するチームクスコでは、車両によってはオリジナルナックルを装着。イチから自社で設計し、NC旋盤でアルミインゴットから削り出した逸品で、キングピン角の調整なども簡単にできるように設計されており、コースや路面コンディションに合わせてアジャストできるようにしている。

 WRC世界王者のカッレ・ロバンペラ選手が乗っていてGRカローラもまさにオリジナルナックルが投入されており、ロバンペラ選手からのフィードバックに合わせて、スピンしにくくも深い角度でドリフトできるようにたび重なる調整が行われていた。

 ただ、一般ユーザーが使うには注意点がある。

 それが、こうしたオリジナルナックルや海外製ナックルを公道に仕様するには、きちんと申請をしなければならないという点。なので、なかなかハードルが高い。実際ストリートカーではここまで大きな切れ角は必要ないし、車検を取る観点からあまり現実的ではない。

※画像はイメージ

 切れ角アップにはナックルなどのパーツのほかにフェンダー加工も欠かせない。切れ角アップをすると、タイヤが通常ではありえない角度まで向きを変えるので、フェンダーに干渉しやすい。サイクルフェンダー化をするとか、フェンダー内部のパーツを切れ角アップに合わせてカットしたり曲げたりしないといけないのだ。切れ角アップもなかなか手間のかかるチューニングのひとつといえよう。


加茂 新 KAMO ARATA

チューニングジャーナリスト

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