もし起こってしまったら……?
なによりハイドロプレーニング現象が怖いのは、路面の間に水膜ができてしまったときには、ドライバーは何も対応できないことだ。前述したように、ハンドルもブレーキも利かないのだ。自然に速度が落ちて、タイヤの排水能力が勝った状態になって水膜を排除、タイヤの接地を回復するまで待つしかない。
ここで注意すべきは、ハイドロプレーニング現象が起きているときは、ハンドルやブレーキの操作をしないことだ。ハンドルを切った状態で滑っていると、グリップが回復したとき急にハンドルが利いてスピンしてしまうこともある。ブレーキを踏んでいると、タイヤが接地した瞬間に強い制動力が発生してしまい、ここでもアンコントロール状態になってしまうことが考えられるからだ。
ハイドロプレーニング現象が起きてしまったと感じたときは、とにかく何もせずにタイヤが接地する速度に落ちるまで、冷静に待っているしか対応策はないといえる。
では、ハイドロプレーニング現象に陥らないためにできることはあるのだろうか。
当たり前の話だが、考え得る原因を解消すれば、ハイドロプレーニング現象は起きづらくなる。前述したように、タイヤの排水性能を超えなければいい。つまり、ドライビングでいえば速度を抑えることが唯一の対策となる。また、タイヤの溝が浅くなっていたり、空気圧が適正でなかったりすると、タイヤの排水能力は落ちてしまう。タイヤのメンテナンスをしっかり行うことも対策となるわけだ。
最近では、気候変動の影響か、短時間に多くの雨が降ることも増えている。降雨量が道路の排水能力を超えてしまうことも珍しくない。単純に雨量が多いからハイドロプレーニング現象が起きやすいとはいえない部分もあるが、本能的に「危ない」と感じたときには速度を抑えるなどして、ハイドロプレーニング現象に陥らないよう注意したいものだ。