クルマの品質向上が長寿命化を助長
それならなぜ平均使用年数が1.4倍まで長期化したのか。この背景には、まず車両の耐久性の向上がある。
1990年頃に新車として売られていたクルマは、いまに比べると塗装や樹脂部品から各種メカニズムや装備まで、耐久性が全般的に低かった。たとえば直射日光が当たりやすいインパネの上面などは、平均使用年数の9年を超えた車両になると、ザラザラに荒れたり、はく離を生じたりするることもあった。
しかし、いまのクルマは生産されて10年を経過しても、普通に使っていれば劣化した印象は受けない。たとえば2014年ごろに売られていた先代ヴェゼル、同じく先代エクストレイルなども、現役として十分に通用する。安全装備や運転支援機能などは現行型が優れているが、通常の使用で不都合は感じない。
クルマの値上げも平均使用年数の長期化に影響を与えた。いまのクルマは安全装備や運転支援機能を割安に装着するが、それでも15年ほど前に比べると、同じ車種同士で比べて価格が1.2〜1.5倍に高まっている。
その一方で平均所得は伸び悩むから、購入予算が同じであれば、小さなクルマに乗り替える。その結果、軽自動車が新車として売られるクルマの40%近くを占めて、ミニバンやSUVでもコンパクトな車種が売れ筋になった。
ただし、ユーザーによってはサイズを小さくできない場合もある。そのような人達は、耐久性の向上もあり、従来の愛車に車検を取って乗り続ける。所得が伸び悩む状況でクルマの価格が高まり、同時に耐久性も向上すれば、1台の愛車を長く使うのは当然の成り行きだ。
とくに最近は新型コロナウイルスの影響で所得が減ったユーザーも多く、新車の納期も遅延しているから、ますます1台の愛車を長く使う。いい換えれば、以前に比べるとクルマを大切に扱うようになった。
それなのに国は「古いクルマは燃費と環境性能が悪い」と決め付けて、初度登録や届け出から13年を超えると、自動車税や自動車重量税を増税する。「保有台数が増えたのに新車の売れ行きが下がる」事実も、古いクルマの増税が罪悪であることを示している。