BMWにとって「Z」は特別! 売ろうが売るまいが歴代「Z」を振り返ると「未来への夢」しかない (2/2ページ)

「Z」の車名が与えられた未発売のモデルが斬新すぎる

 2002年になると、新たなBMWのスタイリスト、クリス・バングルがZを改めて解釈しなおし、Z4として生まれ変わりました。よりオーセンティックなロングノーズ&ショートデッキを体現しつつ、ホイールベースを延ばすことで大人っぽい乗り味を演出するなど、BMWの未来観をリアルに表現したモデル。搭載されるエンジンもZ3から大いに進化して、3タイプのストレート6が用意されました。

 また、クーペボディが発売されたことも初代Z4のトピックでしたが、Z3時代のMロードスターやMクーペと区別するためか、Z4を車名の先頭に付け「Z4 Mクーペ」なる苦肉の策っぽいネーミングとなりましたね。

 2009年には第二世代へとバトンタッチしたZ4ですが、コンセプトは初代をキープ。ただし、リトラクタブル式ハードルーフが採用され「一粒で二度おいしい」モデルに。二代目もスタート時は6気筒エンジンからでしたが、追加された4気筒エンジンはターボを装着するなど小排気量&ハイパワー時代への対応がなされています。なお、BMWの発表では、2009~2016年の間に全世界で11万5000台が売れたとのことで、当時のトップセラーだったことがうかがえます。

 そして、2018年には現行の第三世代を発売。前年のペブルビーチ・コンクール・デレガンスでお披露目をしたことを考えれば、BMWは相当な自信をもってリリースしたに違いありません。実際、シャシーはスープラに使われるなど高性能、かつ低コストという優れモノ。

 ドイツ国内でなく、オーストリアの商業車ブランド「マグナ・シュタイヤ」で製造するというのも、BMWの未来思想が現れているといえるのでしょう。時速50kmまでなら10秒で開閉できるファブリックルーフや、同社のスペシャルカスタムメニュー「インディビジュアル」を活用したインテリアなどはまさに未来的。Zモデルの集大成といっても過言ではないでしょう。

 もっとも、2000年にデビューしたZ8もまたトップ・オブZの称号を受けるにふさわしいモデルかと。1997年にコンセプトカー「Z07」として東京モーターショーに登場した強烈なインパクトは覚えている方も少なくないはず。

 アルミスペースフレームに、BMWが渾身の技術を込めた5リッターV8エンジンを詰め込み、ヘンリック・フィスカーの507オマージュともいえるエレガントなボディと、つけ入るすきもない完成度! Z3同様、ボンドカーに選ばれるのも大いに納得です。

 また、2003年にはBMWがお気に入りのカロッツェリア、ベルトーネがZ8のフレームを使ったコンセプトカー「Z8 Birusa」を発表。残念ながら、このデザインが市販車に反映されることはありませんでした。この当時、BMWに限らずカーデザイナーはインフレ気味でしたからね。

 Z8に続いて、2006年に発表されたのがコンセプトモデルの「Z29」でした。初代Z4をベースにハードトップ化し、ドアはシザースオープンへとカスタムされています。また、キドニーグリルをバンパーと一体化するなど、当時としては野心的なデザインを採用。

 そして、アルミとカーボン素材を多用することで軽量化のスタディも行われ、車体重量1160kgを達成。当時の軽量モデルM3CSLが1385kgですから、相当頑張ったといえるでしょう。

 頑張った、というか頑張り過ぎな感も否めないのが1995年のコンセプトモデル「BMW Z21 Just 4/2」でしょう。リヤにBMW製 バイク、K1100の4気筒エンジン(100馬力)を搭載し、重量550kgというスーパーセブンもどきなマシン(笑)。4輪車と2輪車を製造しているBMWらしいアドバンテージというか、奇想天外なコンセプト。

 とはいえ、のちのKTM X-BOWやT-REXのようにバイクとクルマの融合というのはわりとベーシックなものとなったので、そういう意味では「未来の先取り」で、まさにZらしいものといえるでしょう。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
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DJ(DJ Bassy名義で活動中)/バイク(コースデビューしてコケまくり)
好きな有名人
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