この記事をまとめると
■BMWのZシリーズの「Z」は未来を意味しており斬新なデザインをもつモデルに与えられる
■最初のZシリーズはZ1でありこれまでにないドロップドアを採用していた
■Z1以降、BMWは挑戦的なモデルに「Z」の名を与えて発表を続けている
BMW Zシリーズの「Z」は「Zukunft(未来)」の頭文字
BMW Z4はすでに第三世代となって人気を博していますが、Zを車名に使うのはBMWにとってはちょっと特別な意味があるようです。そもそもZはドイツ語のZukunft(未来)の頭文字をとったもので、彼らにとってはMと同様、あるいはそれ以上の夢や希望が託されていたのです。市販車としてZの名を冠されたクルマはもとより、数あるコンセプトカーにもBMWの未来が託されたものが少なからずあるのがその証しにほかなりません。
最初のZは1989年のZ1ですが、これはユーノス・ロードスターと奇しくも同じデビューイヤー。世界的なロードスター(2座オープン)ブームに便乗したかのようなタイミングですが、BMWとしては507(1956-1959)の後継モデルという位置づけとしていました。
有名なエピソードですが、Z1は当初コンセプトカーとして開発され、市販の予定はなかったのですが、法務部の調査によって「ドアのフルオープンは違法ならず」と判明したこと、そしてフランクフルトショーでの反響が予想以上に大きかったことから販売を決定したとされています。
デザインはBMWファンにはお馴染みのハーム・ラガーイで、バンパーと一体化したかのようなキドニーグリルや、ブリスターフェンダー風のボリュームラインはのちのコンセプトカーにも継承されました。
ちなみに、発売直後の1989年にはクーペの検討用モデル「Z2」が製作されたのですが、Z1の生産ラインに組み入れることが難しく、こちらはコンセプトのみで終了。また、開発は主にBMWのリサーチを担う連結子会社、BMW Forschung und Technik GmbH(いわゆるBMW テヒニク)で行われ、アドバンスドディベロップメント(いわゆるチューンアップ)を担うM社はタッチしていません。
以後、すべてのZシリーズはテヒニク製であり、M社はMロードスター&クーペ(1997)でようやくZをいじくれたわけです。マーケティング上の戦略か、うがった見方をすればテヒニクとMにはちょっとした壁というか確執があるのかもしれませんね。
Z1で培われたスチールモノコックの量産技術は1995年に登場したZ3にも存分に注がれました。3シリーズ(E36)と共有するシャシーは軽量、かつ高剛性という高評価で、1.9リッターからM3の3.2リッターエンジンまで、さまざまなバリエーションがあったのも大きなポイント。
また、ずっとアストンマーティンに乗り続けていた007が初めてのBMWに選んだのもZ3(ゴールデンアイ)で、自爆装置まで載せられていたようです。