メーカー系チームでなければクルマ選びは自由?
また、日産系チームのドライバーもやはり日産車に乗っているようで、NISMOで23号車「MOTUL AUTECH Z」のステアリングを握っているロニー・クインタレッリ選手は、「スカイラインのハイブリッド車に乗っています」としたうえで、「若いころは馬力があるクルマに乗っていて、イタリアにいる時はBMWの3シリーズのモータースポーツバージョンに乗っていたんですけど、子どももいるので、歳をとってからは乗り心地のいいクルマがいいな……と思えるようになってきました」と語る。
ちなみにロニー選手の奥様も日産車に乗っているようで、「妻がAURA NISMOに乗っているので、たまに気分転換で乗っています」とのことである。
また、TEAM IMPULで12号車「MARELLI IMPUL Z」のステアリングを握る平峰一貴選手も日産車のユーザーで、「サーキットではレーシングカーで戦っていますけど、一般道では安全に運転していますからね。普段はスカイライン400Rに乗っていて、いまはスポーツカーやチューニングしたクルマを乗ることはないですね」と語る。
気になるインプレッションについては「400Rはアクセルの踏み始めのピックアップがいいですし、ターボの利き方もスムースでアクセルコントロールがしやすいです。ハンドリングの反応もいいんですけど、それに合わせて乗り心地もいいのでとても気に入っています」とのことで、平峰選手のよき相棒になっているのである。
一方、GT300クラスはどうだろうか?
R&D SPORTで61号車「SUBARU BRZ R&D SPORTのステアリングを握る山内英輝選手はスバルの契約ドライバーだけあって「スバルが車両を貸してくれるんですけど、移動は乗り心地がよくてラクに運転できるクルマがいいので、レヴォーグに乗っています。アイサイトも付いているし、荷物も積めるので本当に助かります」とのこと。
これに対して、メーカー系チームに所属していないドライバーは自由なクルマ選びを行なっているようで、D’station Racingで777号車「D’station Vantage GT3」のステアリングを握っている藤井誠暢選手は「子どもが3人いるので、一番乗っているクルマはメルセデスのVクラスです。Vクラスはやっぱり広いですからね。そのほかにマセラティ・ギブリと、10年ぐらい乗っているMTのフェラーリF355もあります」と語るようにさまざまなクルマに乗っているようだ。
ちなみに、藤井選手はこのほかにも複数のクルマを所有しているようで、「ほとんど乗っていませんが、GRMNヤリスも50台限定のカラー(注:マットスティール)が抽選で当たったので買いました。そのほか、最近ではマクラーレンのGT4モデル(注:マクラーレン570S GT4)を買ったんですけど、こちらもマイカーです。
いま“simdrive”という会員制のドライビングラボ施設を運営しているんですけど、レースに参戦するジェントルマンドライバーが増えてきました。でも、レースをやっていない会員もいるので、次のステップとしてレースをできる環境を用意しようと思ってチームを立ち上げました。そのためのクルマとしてGT4を買ったので、これもほとんど僕は乗っていません」とのことだ。
このようにモータースポーツで活躍するレーシングドライバーたちは、意外にも普段は乗り心地のいいクルマをセレクトする傾向にある。
近年はレーシングカート出身のドライバーが多く、「昔と比べていまのレーシングドライバーはクルマ好きが少ない」ともいわれているが、少なくとも日本最大級のGTレースに参戦しているドライバーの多くがクルマ好きで、普段は利便性かつ快適性の高いクルマに乗っていながらも、クルマに対する興味や愛情をもっているのである。