GT-Rのエンジンを積むフェアレディZの潜在能力に期待大! GT300クラスの大注目マシンについてドライバーとチームに直撃した (2/2ページ)

新型Zはまさにレーシングカーといった仕上がり

──まだ国内のすべてのコースを走っていない状態だと思いますが、Zと相性のいいコースはどちらでしょうか?

福田氏:まだわかりませんが、富士での最高速は速かった。全面投影面積の大きいGT-Rと比べてもよかったので、それを活かしたいですね。

──コーナリングは厳しい状態でしょうか?

福田氏:性能調整で車両重量が重くなっているので、低速も高速もコーナーは苦労している状態です。GTA-GT300車両でもパイプフレームのマシンはコーナリングに強いと思いますが、このZは市販フレームを活かしていることもあって、どちらかというとFIA GT3車両に近い特性かもしれません。それでもGT-Rより荷重移動が少ないので、タイヤへの攻撃性が少なくなっていると思います。

──なるほど。ちなみに市販モデルから流用しているものはあるんでしょうか? あと、GT3車両を買うより、自分たちでGTA-GT300を作ったほうがリーズナブルなんでしょうか?

福田氏:シャシーとルーフは市販ですが、それ以外はほぼレース用です。それに、コスト的に考えるとクルマを1台だけ作るのもかなりの予算を使いますし、市販フレームを使っていることで時間もかかりますからね。コストダウンと製作時間の短縮を図るため、GT-R NISMO GT3のパーツを活かしたい……ということもあって、ギヤボックスやアップライト、シート、エアコン、ステアリング、スイッチボックスなどはキャリーオーバーしていますが、GTA-GT300のほうが安いとはいい切れないところです。

──ちなみにaprさんは、GTA-GT300車両のGRスープラ、GR86を開発してほかのチームに販売していますが、GAINERさんもZを販売する予定はあるんでしょうか?

福田氏:ゆくゆくは販売を考えていますが、まずは完成させないといけないし、コストの算出もしないといけない。まだ暫定的な仕様で、空力や冷却系のパーツも一部は3Dプリンターで製作しながら試している状態ですし、軽量化も進めたい。まだまだカスタマーへの対応には時間がかかると思います。

 以上、チーフエンジニアの福田氏に話を聞いてみたが、マシンのドライビングフィールはどのようなものなのだろうか?

 というわけで、GAINER TANAX Zのステアリングを握る富田竜一郎選手、石川京侍選手の両ドライバーに同モデルのインプレッションをしてもらった。

──新型Zの第一印象は?

石川選手:シェイクダウンのときからレーシングカーでしたね。昨年まで乗っていたGT-Rと比較するとロール感がないし、ダイレクトな感覚があります。まだセッティングが出ていないけれど、毎回、クルマが進化している。クルマのベースはいいと思います。

富田選手:これまでスーパー耐久の市販車ベースのマシンやFIA-GT3などさまざまなクルマに乗ってきたんですけど、もっともレーシングカー的な仕上がりですね。国際モデルのGT3といっても市販車の性格が残っているし、ZでいえばGT4にも乗っているんですけど、それとも雰囲気がまったく違います。市販のフレームを使っているけれど、Zらしさはあまりなくて、剛性感が高い。すべての動きに対して反応が速いですね。

──なるほど。Zらしさはあまりなさそうですね。

富田選手:そうかもしれません。でも、GT500のZと違ってGT300のZは市販フレームを使っていることから、Zベースのレーシングカーの最高峰だと思います。

──どこのコースに合っていますか?

富田選手:昨年まで乗っていたGT-Rと比べるとドラッグが少ないのでストレードエンドのスピードが伸びやすい。そういった意味では富士が合っているような気もします。まだエアロのバランスもあって、ハイスピードコーナーでのパフォーマンスが想定まで届いていないけれど、そこがちゃんとしてくると速くなると思います。

──Zの武器はなんですか?

富田選手:タイヤの摩耗が少ないので、1スティントのタイムの落ちはGT-Rよりもいいと思います。GT-Rではリヤが厳しいことがあったんですけど、そういった心配はないですね。それにトラクションもすごくて安心感もあります。

 このように富田選手、石川選手ともに新型Zに対して好感触。事実、第4戦の富士で11号車のGAINER TANAX Zは予選で8番手につけると350kmの決勝でも安定した走りを披露し、10位で貴重な1ポイントを獲得した。

「いまはまだ開発途中で、今後も各ラウンドでアップデートしていくことになるでしょう」と語るのは、チーフエンジニアの福田氏だが、もともとGAINERは2014年にチーム部門、2015年にはドライバー部門&チーム部門でタイトルを獲得するなど技術力が高いほか、GAINER TANAX Zにはまだまだ伸び代があるだけに、今後の熟成に期待したいところ。

 さらに将来的にはGAINER TANAX Zをイメージしたロードゴーイング対応のカスタマイズパーツの製作および販売も計画されているだけに、今後もGAINER TANAX Zの動向に注目だ。


廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

愛車
スバル・フォレスター
趣味
登山
好きな有名人
石田ゆり子

新着情報