BYD M6はBEVでありながらトヨタのHEVよりも安い!
e6とM6の関係については、あくまで筆者の見方となるが、e6がタクシーなどフリート販売にも対応したシンプルなモデルなのに対し、M6は一般ユーザーや企業幹部用車両としてe6の豪華版として存在するのかもしれない。
すでにインドネシア最大手のタクシー事業者である、「ブルーバードグループ」は2024年4月にe6の導入を発表している。
e6であろうがM6であろうが、タクシー以外の法人需要が目立つモデルのような印象も受けるが、会場内BYDブース壇上に展示してあったM6の実車にはいつも人が集まっていた。核家族化が進むものの、いまでも多世代同居が目立つインドネシアでは、3列シートをもつMPVニーズは高い。その意味ではBEV専用MPVというのは多くのインドネシアの人の注目を集めていたのかもしれない。
地元メディアでは、3列シートを採用するMPVで絶大な人気とステイタスを誇る、トヨタ・イノーバ ゼニクスと比較する報道も目立っていた。
2リッター新世代ダイナミックフォースエンジンベースのハイブリッドエンジンを搭載するイノーバ ゼニクスの価格は4億7760万ルピア(約450万円)からとなっている。
M6はイノーバ ゼニクスとボディ寸法はそんなに変わらない。それでいてBEVでありながらM6は安価だ。ただ、クラウンにいきなり、やや畑違いなブランニューモデルが挑むような構図なのも確かで、筆者としては違和感を覚えるところもある。社用車(偉い人向け)ニーズも多いイノーバ ゼニクスなので、M6も社用車ニーズを狙っているという意味で、イノーバ ゼニクスの車名が出てきているのかもしれないが……。
最大手のタクシー事業者「ブルーバードグループ」では、トヨタのコンパクトMPV(アバンツァ)ベースの営業車両「トランスムーバー」の最新型車両を2024年に入って導入をはじめたばかり。もしかして、e6がトランスムーバーにとって代わってしまうのか? とも思ったが、トランスムーバーは価格が2億ルピア近辺(約195万円近辺)ということなので、e6であってもトランスムーバーの存在を揺るがすような価格にはならないだろうから、あくまで「BEVタクシー」というカテゴリーで、いま導入されている初代e6タクシーを現行e6へ入れ替えることになるようである。
ただし、価格をメインにM6のキャラクター分析をすると、アバンツァとイノーバ ゼニクスの中間に位置し、しかもBEVとなるので、なかなか微妙なポジションとなり隙間的なニーズをつかむことができるかもしれない。さらに、インドネシアでニーズの高いMPVスタイルとなるので、ジャカルタ首都圏など都市部以外でのBYD製BEV車の旗頭として販売促進にもつながるかもしれない。タクシーやライドシェアニーズを狙ったe6とセットで攻めてくるあたりは、BYDらしい周到な販売戦略というものを感じる。