熱烈なファンの要望でマンタの特別参加が許可されるという奇跡
とはいえ、600馬力を優に超えるGT3クラスのマシンと互角に戦えるわけでもありません。パワステもついていないマンタに乗るのは74歳のベックマン氏をはじめ、フォルカー・ストレイチェク(63)、ペーター・ヘス(58)、そして最若手のユルゲン・シュルテンでさえ50をとうに過ぎたドライバー。これでは、長年エントリーしている「マスコット」的存在と思われても仕方ありません。
が、実際はガチなレースを展開しているようで、トップグループと張り合うこともしばしば。自然吸気2リッターエンジンのSP3クラスとなるのですが、トヨタ・カローラで参戦したタイのチームとやり合って、立派に叩きのめしたこともあるとか。しかも、ルールが変更され70kgのウエイトハンデが課せられてのことといいますから、もはやド根性レーシングというほかありません。
また、このマンタは1980年代の骨董品かのように見られがちですが、実際には911GT3のリヤウィングを流用したり、ボンネットやドア、エアロパーツのほとんどをドライカーボンで製作するなど、それほど流行遅れというわけでもなさそうです。
ちなみに、オペルはドイツの中産&労働者階級から絶大な支持を得ているブランドということもあり、サッカー並みの熱狂的ファンが存在することでも有名です。ド根性マンタに対する彼らの応援ぶりといったらなくて、これまたニュル24時間の名物にすらなっているとか。
2011年には生産終了から10年以上経ったマシンは参加が出来ないようルール変更されたものの、ファンの熱烈な要望に応えてマンタは特別に参加が許されるようになったと聞けば、いかに愛されているかがおわかりいただけることでしょう。
残念ながら2024年のレースには参戦できなかった模様ですが、その復活を望む声はドイツ国内にとどまることなく世界中から寄せられたようです。ド根性で戦うマンタ、自分の目で見てみたい、応援したいと思ったのは決して筆者だけではないでしょう。