この記事をまとめると
■2024年秋にホンダはシビックのマイナーチェンジを予定
■LX、EXグレードのMTモデルは廃止されてMTのみのRSグレードが新たに追加される
■発売前のRSにクローズドコースで試乗した
エンジン特性にまで手が入った本物のスポーティカー!
走りはじめた瞬間に、走りの快感が刺激された。エンジンに火を入れ、ストロークの限りなく狭い6速マニュアルのシフトレバーを1速にエンゲージさせる。そしてアクセルペダルを踏み込み、ひとたび走り出せば、その瞬間に爽快感が身体を突き抜けたのだ。
1972年にデビューした初代シビックには、のちに走りの性能に磨きをかけた「RS」がラインアップされていた。その伝統のグレードが復活したのだ。あのころの、ファミリーカーをスポーティカーに変身させるというホンダマジックが蘇ってきた。
ファーストインプレッションは、エンジンレスポンスが爽快になったことだ。スロットルの操作に対してエンジンが軽やかに反応する。回転計の針は、軽快なリズムで頂点を目指そうとする。そればかりか、回転の”落ち”も俊敏なのだ。これがご機嫌な気分の源だ。
そう、これまでシビックには、ハイブリッドのe:HEVとガソリン仕様があり、その内燃機関搭載モデルには6速マニュアルモデルがラインアップされていた。
その一方でシビックには、激辛最速スポーツ「タイプR」が存在している。今回新たにラインアップに加わったのが「RS」。標準車ともいえるガソリン+6速MTの走りの性能を洗練させた、よりピュアなスポーティモデルだ。
タイプRの、過激さや拡大されたボディサイズなどが日常性の障害になっている、それをトゥーマッチと思うユーザーには朗報であろう。
そしてRSは、サスペンションを強化しただけだったり、エアロで武装しただけの安易なニューグレードではない。冒頭で感動をお伝えしたように、エンジン特性にまで手を入れている。これまでやや鈍重に感じていたエンジンレスポンスにメスを入れたのだ。
そのためにフライホイールを30%軽量化している。それだけではなく、エンジンマッピングにも細工が施された。ただ、フライホイールの感性マスを低減させるだけでもレスポンスは鋭くならない。エンジンマッピングの変更も、エミッションをクリアするためには決して簡単ではない。それでもあえて、エンジンフィーリングに労力と資金を投入したところに心が打たれる。数値的なパワーには変更がないようだが、パワーアップしたかのような躍動感が備わっている。
フットワークも俊敏だ。標準車に比較して車高を5mmダウン。ダンパーの取り付ブッシュ等を強化することで、格段にフラットライドが実現している。スアリング剛性も高く、スポーツカーのそれに近い。
「RS」は「レーシング・スポーツ」の略ではなく、「ロード・セーリング」、つまり海原でヨットセーリングを楽しむような、爽快なドライブの意味を込めたと聞かされてきたが、実際に走りを堪能すると「レーシング・スポーツ」をイメージしているのではないかと想像してしまった。
スポーツ度は標準モデルとタイプRの中間に位置している。だが、その範囲のややタイプR寄りなのではないかと感じた。
2040年の完全EV化を宣言したホンダが、いまこうして内燃機関の魅力を追い求めていることをうれしく思う。