マシンに流れる空気の流れをイメージできる
具体的に、彼が流行らせたデザイントレンドをいくつか挙げると以下のようなものがある。
・ハイレーキ・コンセプト(フロント下がりで、リヤの最低地上高が高いスタイル)
・ゼロキール方式(突起=キールを持たせずにフロントのモノコック下部に直接ロワアームを取り付ける方式)
・バットマン・ディフューザー(エイドリアン・ニューエイがレイトンハウス時代から好んでいたトンネル形状のリヤディフューザー)
・複雑な形状のフロントウイングの翼端板(フロントタイヤの影響で生じた乱気流を制御するための3Dタイプの翼端板)
エイドリアン・ニューエイは、コンピュータ(CAD)を使った設計が当たり前の現代でも、製図版を使って手書きで設計図を描くエンジニアで、ある面は非常に古典的だが、彼は人には見えない空気の流れが見えるらしい。つねにアイディアマンであり、レギュレーションの穴を見つけるのが誰よりもうまい。
そうした勘所のよさが、当代一流なのだろう。
これらに関しては、ほかのエンジニアたちの追随を許さない状態が続いており、設計技術が高度化、分業化が進んできても、レギュレーションに合わせ、トータルで最適化をはかり、マシンをまとめ上げる力に関しては、彼の右に出るものがいないのが実情だ。
これまでの実績から考えると、超一流のドライバーに破格のギャラを払うより、エイドリアン・ニューエイに高額なギャラを払って、一流のドライバーと組ませたほうが、むしろチャンピオンへの近道とさえいえるほど。
実際のF1の世界には、超一流のドライバー、スタッフしかいないので、超一流のエンジニア+超一流のドライバーでなければ、タイトル獲得は難しいが、エイドリアン・ニューエイがチャンピオンの大きなカギを握っていることだけは、誰も否定できないはず。
エイドリアン・ニューエイが2025年でレッドブルを離脱することはすでに発表されているので、彼の動向が、来年以降のF1勢力図に大きく影響するのは間違いない。