アップデートによる今後の「ハイパフォX」の進化に期待
2024年よりTeam SDA Engineeringの監督兼チーフエンジニアに就任した伊藤 奨氏は、「ハイパフォXでターボエンジンとAWD駆動力制御技術、そして高出力、AWDを受け止めるためのシャシーを鍛えたいと思います」とのこと。
具体的には、「エンジンに関しては環境対応をしていくと出力が下がっていきがちなので、スーパー耐久のなかで水平対向エンジンの可能性を探ったうえで環境対応をしていきたいと思います。そのためにBRZや全日本ラリーで培った制御を応用。アンチラグを利かせているので音の面でもいいと思います。また、AWDについては、BEVでは再現できないプロペラシャフト付きAWDのよさがあると思うので、そのよさを探りながら、BEVにも活きる技術を開発していきたいと思います」としたうえで、「エンジンやAWDだけでなく、シャシーや空力も鍛えていきたいと思います」と語る。
このハイパフォXは7月上旬のシェイクダウンを経て、第3戦のオートポリスでデビューを果たしたが、その間にも進化を果たしているようで、ドライバーのひとり、井口卓人選手によれば「まだノーマルに近い印象ですが、シェイクダウンから足まわりが改善されていたので、今後の期待がもてるデビューですね。BRZと比べると全高が高いのでクルマの動きが大きくなっているけれど、AWDのよさを活かせるように仕上げていきたい」とのこと。
同じくハイパフォXのステアリングを握る山内英輝選手も、「シェイクダウンから短い時間でしたが、早いスピードで改善されているのでいいことだと思います。でも、この排気量で考えるとまだまだです。市販車に近い状態でノビシロしかないので、煮詰めていきたいと思います」と印象を語る。
こうしてデビュー戦を迎えたハイパフォXは、27日の予選でST-Qクラスの4位を獲得した。Bドライバーのタイムで見ると、山内選手のベストタイムが2分03秒742で、ST-2クラスでベストタイムをマークした三菱ランサーの2分00秒382(菊池靖選手)と比べると約3秒も遅い状態。井口/山内の両選手が語るように、現時点では熟成不足の段階にあるようだ。
さらに、28日に行われた5時間の決勝でもマイナートラブルが続出。本井チーム代表によれば、「最初は順調だったんですけど、サスペンションの部品がタイヤに接触していたので、ピットインして対応しました。その後は反対側も同じ症状が出ていたのでピットイン。そのあとはエンジンが吹けない状態になったのでピットイン。原因はわからなかったので、いろんな部品を変えたことで症状は治ったんですけど、足まわりとエンジンのトラブルはその後も出ていました」とのことで、ハイパフォXは予定外のピットインを繰り返しながらの走行を強いられることとなったのである。
その結果、ハイパフォXはST-Qクラスの4番手となる98周でチェッカー。しかし、残念ながら規定周回数にわずかに届かず、ハイパフォXは完走を果たせずに、デビュー戦を終えることとなった。
このように、スバル勢にとってはほろ苦いデビュー戦となったが、「ロングおよび実戦スピードゆえに発生したトラブルですからね。チームとしてはポジティブに捉えていて、次戦までに検証と対策を行いたいと思います。それに、若いスタッフのアイディアが意外とハマってプロドライバーが高く評価してくれたことでモチベーションも高まっている。この一戦を通してチームの雰囲気がよくなっていることが大きい」と本井チーム代表はコメント。
さらに伊藤監督も、「目標としてはAWDだけどよく曲がるクルマにしたい。速さという部分では、ST-ZクラスのGT4車両と戦ってほしい……というファンの期待もあるので、まずはST-2クラスでトップを目指して、次にGT4車両を目指したい。これまでは枠のなかで抑えていた部分もありますが、今後はテーマを達成するために必要な部分があればトライしていきたい」と振り幅の広いアップデートを行なっていくようなので、今後もハイパフォXの動向に注目したいものだ。