BYDがシールを投入! ハッキリ言って「不人気カテゴリー」のセダンをあえて日本発売した理由とは?

この記事をまとめると

■世界的にも人気が低迷しているセダンのカテゴリーにBYDはEVを投入してきた

■EV業界をリードするテスラもまずはセダンからラインアップする戦力を採っている

■日本では製造業側の都合で売れ筋商品だけを作るといった偏りがあるように感じる

テスラもメルセデス・ベンツもEVセダンを用意する

 4ドアセダンの人気が落ちているのは世界的な傾向だ。先ごろ、2024年以降の戦略を発表したドイツのフォルクスワーゲンは、上級車種パサートについて、セダンを止めステーションワゴンのみにしたと語った。

 かつて、世界的にも政治家や企業の要人が後席に乗るのはセダンと決まっていた。だが今日では、ミニバンやSUV(スポーツ多目的車)が大勢を占めるようになった。日本でも、テレビニュースなどで映し出される政治家が、大型ミニバンから降り立つ場面を目にすることが多い。

 そうしたなか、SUVから日本市場へ電気自動車(EV)を導入しはじめた中国のBYDは、次に小型ハッチバック車、そして4ドアセダンの順に車種を展開している。

 小型ハッチバック車は価格の安さが注目され、世界的に中国製のEVが注目される要因のひとつとなっている。東南アジアなどでは、エンジン車と遜色ない価格で現地生産されたEVが販売され、たとえばタイでは、長年にわたり日本車の人気が高く、現地生産も積極的に行われてきたが、今日では、中国製EVに押されているとの報告がある。

 では、EVの4ドアセダンの行く末はどうなのであろう。

 ドイツのメルセデス・ベンツやBMWは、EVの上級車種に4ドアセダンを導入している。売れ筋は、ドイツであってもSUVであろう。しかし、4ドアセダンにはそれなりのよさがあるのも事実だ。

 ことに上級車種の4ドアセダンは、後席に乗る機会も多いと考えられる。その際、客室と荷室をわけた車両構成により、4ドアセダンは快適性に優れる。また、背が低いことは低重心につながり、走行中のクルマの挙動が安定し、乗り心地がよくなる。

 SUVも、静粛性や乗り心地を高める手段はある。しかし、本質的な素性として、後席の快適性は4ドアセダンが上まわる。

 米国のテスラも、EVの本格導入に際してまず手がけたのは、モデルSという4ドアセダン(実際にはリヤハッチバック)と見える車種であった。より小型な車種の導入に際しても、4ドアセダンのモデル3を先に発売し、次いでSUVのモデルYを開発した。

 世界で初めて自動車を発明したメルセデス・ベンツや、EVで世界を牽引するテスラの方針は、ひとつの重要なカギを握ることになるだろう。そこにBYDも追従している。

 国内の大手企業からは、役員などが乗るための社用車向けに、なぜ国産EVという選択肢がないのか? との声が出ている。燃料電池車は、水素充填が不便だとも述べる。

 企業の立ち場として、環境への配慮を社用車で表現したいと思っても、日本車に4ドアセダンのEVがないことが、ハイブリッド車(HV)にとどまらざるを得ない状況を生み出している。しかし、グローバル企業であれば、世界の動向がEVであることを感じているだろう。

 日本のモノづくりにこだわる声は広がっている。だが、じつは製造業側の都合で、売れ筋商品だけを作る偏りがあるのではないか。社会的な多様性を謳いながら、使う側の商品の選択肢が、儲からないというひと言で狭められているようだ。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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