中国メーカーの工場進出でタイが東南アジアのデトロイト化! その勢いに逆行するように生産を縮小するホンダは大丈夫なのか? (2/2ページ)

現地生産による低価格化でさらに勢いを増す中国メーカー

 タイで現地生産することで、中国系BEVの車両価格がさらにお値打ち感の高いものになるだろう。中国系BEVの価格設定については、中国政府の多額の補助金などの影響も大きいと問題視する声も大きい。そんな話を聞いていて、コロナ禍前の航空運賃の話を思い出した。

 新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、コロナ禍前のように海外渡航が気軽にできるようになっても、航空運賃はなかなかコロナ禍前の状況に戻らない。もちろんここ最近の世界的なインフレやそれに伴う人件費の高騰なども影響しているのだろうが、コロナ禍前のように、中国系航空会社の想像を絶する低い航空運賃設定がないことも影響していると聞いたことがある。

 コロナ禍前に筆者は年2回ほど中国のモーターショー取材のため中国を訪れていた。とくに毎年秋には華南地域の広州市を訪れていた。その当時は、羽田空港と広州白雲空港の単純往復ではなく、帰国時に内陸の湖北省の省都武漢経由にすると、エコノミーで4万円前後、ビジネスクラスでも8万円ほどで利用することができた。広州便に限らず、そして中国系航空会社なら、どこでもどこへでも格安で利用することができた。コロナ禍前にはこのような中国系航空会社に押される形で、そのほかの国の航空会社を巻き込んで航空運賃の過当競争が起こっていたというのである。

 筆者はタイやインドネシアへ行くときには、台湾の航空会社で台北経由にて出かけるのだが、インドネシアのジャカルタへの往復ビジネスクラス利用でも20万円いかなかったのだが、いまでは30万円以上も珍しくなくなっている。

 中国系航空会社も目立った格安運賃を現状で採用しているわけではない。一方で、ハイパーインフレの影響で高騰していた欧米の航空会社の航空運賃は落ち着きを見せてきているので、ある意味、航空運賃が正常化したともいえるのかもしれない(実際に補助金などが影響していたかは確認できていない)。

 同じ土俵で語ることはできないが、中国メーカーのBEVをある意味「野放し」にしておくと、前述したような航空運賃のようなことの二の舞を招くことを警戒し、中国系メーカーのBEVに規制をかけようとする国や地域が目立っているのかもしれない。

 先ごろ、日本国内でも発売されたのが、「eスポーツセダン」となるBYDシールの後輪駆動モデルで、日本国内販売価格は528万円となっている。これだけ見ると「結構高いなぁ」とも思えるのだが……、「日系メーカー関係者によると、日本車でこのスペックのBEVとなると528万円という価格設定は実現できないと話してくれました」と事情通は教えてくれた。

 世界的にHEVが注目されているが、海外では日本以上に「HEV=トヨタ」となっており、日本メーカーすべてに有利にことが運んでいるわけでもない。今回のホンダのタイでの工場統合は残念な話であり、とかくネガティブに捉えられがちでもあるが、ホンダは2040年には販売するすべてのモデルをEVにするとしているメーカーでもあり、その側面では既定路線と表現することもできるかもしれない(実際これに先立ちホンダはタイでのBEV生産を開始している)。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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