トラックの隅から生えてる「牙」のようなアイテムは? ドレスアップ目的の人もいるその名も「象牙ホース」とは

この記事をまとめると

■トラックに黒いホースが取り付けられていることがある

■これは「水抜きホース」と呼ばれるもの

■活魚運搬車や冷凍車には欠かせない存在だ

荷室に溜まった水を排出する

 日夜荷物を積んでわたしたちの暮らしを支えてくれている、全国各地の頼れるトラックたち。2024年問題によって大きな変化が生じてしまうかもしれないが、トラックが日本の物流を支えているのは周知の事実である。

 そんなトラックに、黒色の太いホースが取り付けられているのをご存じだろうか。その多くは箱型の冷凍車なのだが、ときおり水産物などを運ぶ平ボディやダンプにも取り付けられている。今回は、そのホースについて解説したい。

 トラックに装着されているホースは、その名も「水抜きホース」と呼ばれている。荷室に水が溜まるような業種のトラックに装着されているもので、とくに活魚運搬車や冷凍車には欠かせない存在となっているのだ。

 海水とともに活きた魚を運ぶ活魚運搬車はわかりやすいかもしれないが、鮮魚を運ぶ冷凍車にも水抜きホースはマストアイテム。陸揚げされたばかりの鮮魚を入れたトロ箱(荷箱)には、鮮度を保つように氷漬けされたうえで出荷されており、魚の状態がよく見えるように蓋がされていないものが多い。

 そのため輸送中に溶けた氷が水分となり、冷凍車の荷室内に溜まってしまうのだ。そんな冷凍車の床面には、四方の隅に水抜きホースへとつながる排水口が装備されているのである。

 冷凍車の床面には、溜まった水が排水口へと流れるように溝が掘られているのだが、冷凍車は荷室内の温度を一定に保たなければならない。そのため、水抜きホースから外気が荷室内に入ってこないようにすべく、排水口には洗面所のようなゴム製の栓が取り付けられている。水が溜まれば栓を抜いて排水し、また栓をするといった具合だ。

 荷室内を洗う際にも水を水抜きホースから排出できるため、とても便利な存在なのだ。エアサス車であれば後輪を限界まで落とす(車高を下げる)ことで、後部左右の水抜きホースから車体を汚すことなく排水できるのである。

 そんな水抜ホースだが、プライベートなデコトラにも装着される傾向にある。1990年代を皮切りに、デコトラ愛好家たちの間で水抜きホースを大きく曲げて取り付けることがブームとなったのだ。街道レーサーのオイルクーラーよろしく、荷室の床面を貫通させないダミーのホースを取り付ける車両が続出するほど、人気を集めた。そのように曲げられたホースは、その形状から「象牙ホース」と呼ばれている。

 ホース自体はゴム製なので危険性は少ないが、ホースを極端に曲げた車両の場合は内部に鉄筋を仕込んでいるケースもあるため、過激な車両には近づかないほうが吉。もちろん車体からホースがはみ出してしまうと違法改造になるため、象牙ホースを取り付ける側も注意が必要だ。

 デコトラの飾りとは利便性を無視したようなものばかりだと思っている人も多いかもしれないが、じつのところはそうでもなかったりする。もともと装備されていた重要な役目を担うアイテムに手を加えたものが、飾りに発展したというケースが多いのだ。それも仕事車をベースにするという特殊なデコトラ文化の、面白い部分である。


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