「精密機器輸送中」って一体何を運んでる? 万一の事故では「数百億」の賠償もあるってマジか!

この記事をまとめると

■「精密機器輸送中」というステッカーを貼ったトラックが存在する

■「構造が複雑で高度な加工や組み立て、高精度な動作や性能をもった機器」が精密機器だ

■「精密機器輸送中」に表示の義務はない

ステッカーの貼付が義務ではない

 日々、多くのトラックが行き交っているが、まれに「精密機器輸送中」と書いたステッカーを貼った車両が走ってくることがある。これは、特定の荷物を運ぶトラックのことを表しているのだが、「危」「毒」「高圧ガス」などのように、表示が義務化されたものではない。乗用車でいえば「子どもが乗っています」、荷物でいえば「ワレモノ注意」というような、必要に応じて任意に掲示されているものなのだ。

 では、精密機器とはいったいどういったものを指すのか。これには定められた定義などといったものはないが、概ね「構造が複雑で高度な加工および組み立て技術を要し、高精度な動作や性能を持った機器のこと」を指すとされる。代表的な機器は以下のとおりだ。

・出力機器
3Dプリンター・スキャナー・印刷機器・CAD機器・大型デジタルプリンター・造形機全般など

・通信機器
サーバー制御盤・分電盤・キュービクルなど

・理化学・医療機器
インキュベーター・研究機器・分離器・検査機器・リハビリ関連・医療用ベッド・超音波診断装置・心電計・脳波計・内視鏡・X線透視撮影装置・CT・MRI・病理検査機器・人工透析装置・人工呼吸器など

・光学・精密測定機器
投影機・測定顕微鏡・画像測定機・三次元測定機・真円度測定機・万能投影機・万能試験機・高周波膜厚計・プラネタリウム・双眼鏡・望遠鏡など

・レーザー加工機・工作機器
放電加工機・超音波加工機・数値制御放電加工機・レーザー加工機・プラズマ加工機・ウォータージェット加工機・レーザーカッター・レーザーマーカー・レーザー彫刻機など

・分析機器
電位測定システム・ダイナミック光散乱光度計・高感度示差屈折計・キャピラリー電気泳動装置・高分子フィルムダイナミクス解析装置・測色色差計・熱分析装置など

・福祉機器
車いす・介護用ベッド・歩行器・福祉車両・階段昇降機・歩行訓練機器・段差解消機など

・宇宙航空部品
航空機器・航空宇宙用レーダー・宇宙衛星機器・宇宙ロケット・航空機用エンジン・船舶用エンジンなど

 精密機器輸送を請け負うのは、専門事業者か大手事業者の専門部門である。使用するトラックはエアサス装着車両で、揺れが最低限に抑えられるものを使う。専門事業者であれば、先に例示したすべての機器が輸送できるというわけではない。機器によっては高い専門性を必要とするものや、分解組み立てが複雑なものもあるので、専門事業者でも輸送可能な範囲を限定していることがあるのだ。

 輸送手順は梱包・積み込み・輸送・荷降ろし・開梱だが、機器によっては分解・取り外し・組み立て・据え付けなどをしなければならない。また、温度管理・振動対策なども適切に行う必要があるので、同一事業者が一気通貫で行うことが望ましいとされる。輸送ごとに条件・環境などが変わるため、輸送料金はその都度見積もりを出すことが多い。

 このなかでは、万一の際の賠償責任にも触れられている。多くの場合、精密機器は高額なので数百万円から数億円の賠償に発展することもあるために、輸送保険をかけることになる。その目安は、機器価格(賠償範囲)の0.2%であることが多いそうだ。

 しかし、お金では解決できない貴重な機器もあるので、輸送に当たるのはプロフェッショナルの集団だ。彼らは細心の注意を払い、貴重な機器を慎重に輸送している。もし、「精密機器輸送中」の表示をつけたトラックを見かけたときには、優しい気持ちで見守ってあげるとよいだろう。


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